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2006年1月の10件の記事

平成20年2月15日 東京地裁 平成18(ワ)15359号 損害賠償等請求事件(著作権) 11

2 争点2(本件書籍に関する原告の著作権の持分割合)について

共同著作物の持分割合については,共有者の意思表示によって定まり,共有

者の意思が不明な場合には,各共有者の持分は相等しいものと推定される(民

法264条,250条参照)。

本件書籍については,前記1(1)認定のとおり,印税の配分率について,本

件書籍が刊行される直前に,出版社である草思社のDから,原告と被告Bに対

して,本件書籍の制作過程における作業量を考慮して,本件書籍の印税(10

パーセント)を,原告に6パーセント,被告Bに4パーセント配分してはどう

かという提案があり,これを受け,原告と被告Bとの間で,最終的に,原告を

19

6.5パーセントとし,被告Bを3.5パーセントとする旨の合意が成立して

いる。

上記事実に照らせば,本件書籍の著作権の持分割合については,共有者であ

る原告と被告Bとの間で,原告を65パーセントとし,被告Bを35パーセン

トとする合意があったものと認めるのが相当である。

なお,本件全証拠によっても,被告Bと原告との間で,本件書籍に関する原

告の著作権共有持分を被告Bに譲渡する旨の合意がされたことを認めることは

できない(かえって,本件書籍の刊行に当たって,原告と被告Bとの間で,本

件書籍の印税配分率が合意されていたことは上記のとおりである。)。

3 争点3(被告らによる著作権侵害の有無)について

(1) 各本件文章と各被告文章とを対比した結果は,別紙「本件書籍と被告書

籍との文章対比表」記載のとおりであり,これらの部分についての被告書籍

における表現は,本件書籍における表現をほぼそのままに引き写したか,本

件書籍における表現を平易な言葉を用いて修正したり,一部を削って簡略化

したり,並べ替えたりしたものにすぎないといえる。

したがって,各被告文章は,各本件文章の内容及び形式を覚知させるに足

りるものか,少なくとも,各本件文章の表現形式上の本質的な特徴を直接感

得することができるものであるということができる。

そして,被告書籍も本件書籍も共に,被告Bの体験や心情等をつづった自

叙伝であることに加え,証拠(甲2,3,乙5)及び弁論の全趣旨によれば,

被告書籍の本文(94頁)や末尾に掲載された被告Bのプロフィールの中で,

被告Bの著書として本件書籍が紹介されていること,被告書籍の執筆に関与

したCのブログ中で,被告書籍が本件書籍の子ども向け書籍である旨言及さ

れていることなどを総合すれば,各被告文章は各本件文章に依拠して作成さ

れたものであると認められる。

そうすると,各被告文章は,各本件文章を複製ないし翻案したものである

20

というべきである(なお,各被告文章が各本件文章の翻案に当たることにつ

いて,被告らは争っていない。)。

(2) (1)で述べたところによれば,原告の同意なく,各本件文章を複製ないし

翻案した各被告文章を含む被告書籍を制作,発行することは,本件書籍に関

する原告の複製権(著作権法21条),翻案権(著作権法27条)又は譲渡

権(著作権法26条の2)を侵害するものといえる。

なお,このことは,本件書籍の共同著作者である被告Bによってされた行

為であっても同様である(著作権法65条2項)。

平成20年2月15日 東京地裁 平成18(ワ)15359号 損害賠償等請求事件(著作権) 12

(3) 被告Bは,前記1(1)で認定した本件書籍の創作の経緯を認識していたも

のと認められるから,原告の同意なく被告書籍を制作したことにつき,少な

くとも過失が認められる。

また,前記1(1)認定のとおり,本件書籍の末尾奥付には,「著者」とし

て被告Bの氏名が,「構成」として原告の氏名が,それぞれ記載されており,

本件書籍の末尾には,「2003 c B,A」と記載されていたことに照らすと,

被告汐文社には,原告の同意なく被告書籍を発行したことにつき,少なくと

も過失が認められる。

そして,弁論の全趣旨によれば,被告汐文社から被告Bの自叙伝を発行す

るとの企画の下,被告Bにおいて被告書籍を制作し,被告汐文社においてこ

れを発行したものと認められるから,被告らは,被告書籍の制作,発行によ

る本件書籍に関する原告の著作権の侵害につき,共同不法行為責任を負うと

いうべきである。

4 争点4(被告らによる著作者人格権の侵害の有無)について

被告らは,原告が著作権持分を有する本件書籍について,前記3で述べたと

おり,原告に無断で改変を加えて二次的に利用した被告書籍を制作し,これを

発行したものであり,しかも,被告書籍に,原告の氏名を表示しなかったので

あるから(甲2,乙5),本件書籍に関する原告の同一性保持権(著作権法2

21

0条)及び氏名表示権(著作権法19条)を侵害したものといえる。

また,前記3(3)で述べたところによれば,被告らには,上記侵害行為につ

き,少なくとも過失が認められるから,被告らは,被告書籍の制作,発行によ

る本件書籍に関する原告の著作者人格権の侵害につき,共同不法行為責任を負

う。

5 争点5(被告書籍の複製,頒布の差止め及び廃棄の必要性)について

(1) 被告らによる,被告書籍の制作,発行行為は,前記3及び4で述べたと

おり,本件書籍に関する原告の著作権及び著作者人格権を侵害する行為であ

る。

そして,本件において,被告らが,上記著作権及び著作者人格権侵害を争

っていること(弁論の全趣旨)からすれば,被告らに対し,被告書籍の複製,

頒布の差止めを認める必要性がある。

(2) また,被告汐文社は,被告書籍を8000部発行したうち,499部を

在庫として所有し,占有しているから(弁論の全趣旨。なお,在庫部数につ

いて当事者間に争いがない。),被告汐文社に対し,これら被告書籍の廃棄

を命ずる必要性がある。

平成20年2月15日 東京地裁 平成18(ワ)15359号 損害賠償等請求事件(著作権) 14

(計算式)

1300円×7500部×0.1×45/125×65/100

=22万8150円

オ以上によれば,エの算定による方がウの算定によるよりも高額であるか

ら,財産的損害については,22万8150円と認められる。

(2) 精神的損害について

被告らによる著作者人格権の侵害態様,被告書籍の発行部数,販売部数等,

本件に現れた一切の事情を総合考慮すると,被告らによる著作者人格権の侵

害により原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料は30万円と認めるのが相

当である。

(3) 弁護士費用

24

本件事案の内容,認容額,本件訴訟の経過等を総合すると,本件著作権侵

害行為及び本件著作者人格権侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用の額

は,10万円と認めるのが相当である。

(4) (1)ないし(3)の合計62万8150円

7 争点7(謝罪広告の必要性)について

(1) 原告は,本件書籍に関する著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示

権)が侵害されたとして,被告らに対し,謝罪広告の掲載を請求する。

著作者は,故意又は過失によりその著作者人格権を侵害した者に対し,著

作者の名誉若しくは声望を回復するために,適当な措置を請求することがで

き(著作権法115条),「適当な措置」には謝罪広告の掲載も含まれる。

同条にいう「名誉若しくは声望」とは,著作者がその品性,徳行,名声,信

用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価,すなわち社会的名

誉声望を指すものであって,人が自分自身の人格的価値について有する主観

的な評価,すなわち名誉感情を含むものではないと解される。

(2) 本件についてみると,前記1(1)認定のとおり,そもそも,本件書籍は,

被告Bの体験や心情等をつづった自叙伝であり,本件書籍の表紙には,被告

Bの写真,本件書籍の書名「運命の顔」との表記と共に,被告Bの氏名のみ

が記載され,本件書籍の背表紙にも,被告Bの氏名のみが記載されており,

原告の氏名は,本件書籍の末尾奥付に,「著者」として被告Bの氏名が記載

されるとともに,「構成」として記載されているにとどまること,被告書籍

も,本件書籍と同様に,被告Bの体験や心情等をつづった自叙伝であること,

被告書籍の内容,被告書籍の販売部数が7500部とそう多くはないこと等

に照らし,被告書籍が発行されたことによって,原告に対する社会的な名誉

が毀損されたとまで認めることはできないから,謝罪広告の掲載を求める請

求は理由がない。

8 よって,原告の本訴請求は,被告らに対し,民法719条に基づき,連帯し

25

て62万8150円及びこれに対する被告書籍の発行日である平成16年11

月30日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金

の支払を,著作権法112条1項に基づき,被告書籍の複製,頒布の差止めを,

被告汐文社に対し,同条2項に基づき,被告書籍の廃棄を求める限度で理由が

あるから,これを認容し,その余はいずれも理由がないから,これを棄却する

こととし,仮執行宣言の申立てについては,主文記載の限度でこれを相当と認

め,その余は相当でないので却下することとして,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第47部

裁判長裁判官阿部正幸

裁判官平田直人

裁判官柵木澄子

26

(別紙)

書籍目録

1 書名運命の顔

発行者<略>

発行日2003年10月30日

発行所株式会社草思社

定価1500円

2 書名さわってごらん、ぼくの顔

発行者<略>

発行日2004年11月30日

発行所株式会社汐文社

定価1300円

以上

27

(別紙)

謝罪広告目録

1 私共は「さわってごらん、ぼくの顔」と題する書籍(以下「侵害書籍」といい

ます)において,A殿の著作物「運命の顔」(2003年10月30日初版,㈱

草思社)の表現を無断で利用し,もってA殿の著作者人格権及び著作財産権を侵

害したことについておわびするとともに,今後,侵害書籍及びその類似出版物の

印刷,製本,販売又は頒布をしないことはもとより,A殿の著作物を他の書籍に

おいて無断で流用したり,私共が第三者に対して行う講演,教育,指導及び研修

において無断で流用するなど,A殿の著作物の全部又は一部を今後無断で使用し

ないことを誓約致します。

B ㈱汐文社

2 掲載条件

(1) 被告株式会社汐文社の公式ホームページトップページ(アドレスhttp:<略

>)に掲載すること

(2) 1文字12ポイント以上のフォントで掲載すること

(3) 1年間掲載すること

以上

28

別紙

本件書籍と被告書籍との文章対比表

<省略>

29

別紙

被告Bの口述と第1原稿及び本件書籍との対比表

<省略>

__

平成20年2月15日 東京地裁 平成18(ワ)15359号 損害賠償等請求事件(著作権) 13

6 争点6(損害の有無及び額)について

(1) 財産的損害について

ア被告書籍について,定価が1冊1300円であること,販売部数が75

00部であること,上記販売につき卸売販売価格が1冊780円であるこ

と,被告書籍の発行部数は8000部であり,これを発行するために被告

汐文社が要した費用は,印刷製本代352万5970円のほか,162万

円(出荷手数料52万円,広告費50万円,編集費30万円及び営業費3

0万円)であること,被告Bが被告書籍について得る印税は,1冊につき,

定価1300円の5パーセント相当額であることは,当事者間に争いがな

い。

22

また,証拠(乙6)及び弁論の全趣旨によれば,本件書籍につき,被告

Bが被告汐文社から支払を受けた印税額(利益額)は合計46万8000

円であると認められる。

そうすると,被告汐文社が本件書籍の発行により得た利益額は,23万

6030円(780円×7500部-352万5970円-162万円-

46万8000円)となる。

イさらに,被告書籍のうち,本件書籍に関する原告の著作権を侵害するの

は,別紙「本件書籍と被告書籍との文章対比表」の「被告書籍」欄に記載

の部分であり,証拠(甲2,乙5)によれば,同部分は,行数にして合計

約547行である(ただし,1行の途中から始まるものや1行の途中で終

わるものについては,侵害部分に係る文字数が同行の文字数の過半数を超

えている場合には1行として数え,過半数に満たない場合には1行として

数えないものとして算出した。なお,同欄の番号86と番号87について

は,番号86の最後の行と番号87の最初の行とが同一の行にあたり,同

一行内の番号86に係る部分の文字数と番号87に係る部分の文字数とが

同一であるため,両者とも過半数に満たないものの,これについては,番

号86に行数を加算するものとした。)。

被告書籍の1頁当たりの行数は12行であり,上記侵害部分を頁数に直

すと45頁(小数点以下切捨て)となる。被告書籍の本文(4頁ないし1

31頁)の総頁数は,頁全体が写真となっている頁(合計3頁)を除くと,

125頁であるから,総頁数に対する侵害部分の頁数の割合は,125分

の45である。

ウ著作権法114条2項に基づく場合

被告らが,被告書籍の制作,発行により得た利益は,前記アによれば,

合計70万4030円(46万8000円+23万6030円)である。

前記イのとおり,総頁数に対する侵害部分の頁数の割合は,125分の

23

45であり,本件書籍に関する原告の著作権の持分割合は100分の65

であるから,原告が被った損害は,次の計算式のとおり,16万4743

円(円未満切捨て。以下同じ)となる。

(計算式)

70万4030円×45/125×65/100=16万4743円

エ著作権法114条3項に基づく場合

本件書籍の使用料相当額は,被告書籍の定価1300円の10パーセン

トと認めるのが相当である。

上記ウと同様に,原告が被った損害を算定すると,次の計算式のとおり,

22万8150円となる。

なお,原告は,著作権侵害訴訟における損害額の算定については,通常

の取引関係において合意される利用料率よりも高率な利用料率により損害

額を算定すべきである旨主張するものの,著作権法114条3項が「著作

権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」と規定していることに

照らし,採用することができない。

平成20年2月21日 知財高裁 平成19(行ケ)10230号 審決取消請求事件(商標権) 1

- 1 -

平成20年2月21日判決言渡

平成19年(行ケ)第10230号審決取消請求事件

(平成19年12月12日口頭弁論終結)

判決

原告ルークラメレンウントクツプ

ルングスバウベタイリグングス

コマンディートゲゼルシャフト

訴訟代理人弁護士●●

同●●

同●●

訴訟代理人弁理士●●

●● 

被告エヌユーケイオートパーツ

カンパニー,リミテッド

主文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日

と定める。

事実及び理由

第1 原告の請求

特許庁が無効2006-89029号事件について平成19年2月15日に

した審決を取り消す。

第2 前提となる事実関係

1 特許庁における手続の経緯

- 2 -

( ) 被告は,平成16年2月51 日に登録出願され,同年9月10日に設定登

録された登録第4802490号商標(以下「本件商標」という。)の商標

権者である。

本件商標は,別紙商標目録(1)の構成よりなるものであって,中央に配

された太字斜体ゴシックで横書きされた「NUK」の欧文字の周囲を略楕円

形で囲ったものであり,商標法施行令1条別表の第12類(以下,単に「第

12類という。他の類も同じ。)「陸上の乗物用の動力機械(その部品を除

く。),陸上の乗物用の機械要素,自動車並びにその部品及び附属品,二輪

自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」を指定商品とするものであ

る。

平成20年2月21日 知財高裁 平成19(行ケ)10230号 審決取消請求事件(商標権) 2

(2) 原告は,平成18年3月1日,特許庁に対し,本件商標の指定商品中「陸

上の乗物用の動力機械(その部品を除く。),陸上の乗物用の機械要素,自

動車並びにその部品及び附属品」についての登録を無効とする旨の審決を求

めた。特許庁は,同請求を無効2006-89029号事件として審理をし

た上,平成19年2月15日,本件審判の請求は,成り立たない旨の審決を

し,その謄本は,同月27日,原告に送達された。

(3) 引用商標

原告(請求人)は,審判手続において,本件商標は,下記の各引用商標と

外観及び称呼上相紛らわしい類似の商標であるから,商標法4条1項11号

に該当し,同法46条1項1号により無効とされるべきであると主張した。

ア登録第1361678号商標(以下「引用商標1」という。)は,別紙

商標目録(2)のとおりの構成よりなるものであって,中央に配されたゴ