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(9) 原告パズルHについて
原告パズルHは,ナイフを4回使って表面にデコレーション文字が書かれ
ている円柱型ケーキを同じ形に8等分するという問題であり,その答えは,
ナイフを1回使って表面の文字を薄く切り取ってから,円柱を底面に平行に
切って高さ方向に2分するとともに,頂面の円を十文字に切って4分すれば,
同じ形で8等分を得られるというものである。
これに対し,被告パズルHは,ナイフを3回使って,円柱型ケーキを8等
分するというものであり,円柱を底面に平行に切って高さ方向に2分すると
ともに,頂面の円を十文字に切って4分するとの切り方において,原告パズ
ルHの切り方と一部同じ切り方である。
このような着想によるパズルは,平成3年発表の原告パズルHよりも以前
から存在し,例えば,昭和53年発行の多湖輝著「頭の体操第6集」(光
文社発行)には,ナイフを3回使って円柱状のケーキを8等分するという問
題が掲載されている(乙13)。
以上を踏まえて検討するに,円柱を底面に平行に切って高さ方向に2分す
るとともに,頂面の円を十文字に切って4分すれば,8等分を得られること
自体は,数学的解答ともいえる単なるアイデアであり,これ自体を特定の者
に独占させるのが相当ではないことは明らかである。また,この着想により
パズルを表現する場合,円柱型ケーキをナイフで切ることは,ありふれた表
現方法にすぎないものと認められる。したがって,原告パズルHと被告パズ
ルHとで共通する点は,ナイフを3回使用して円柱型ケーキを8等分すると
いう,単なるアイデアとありふれた表現の部分だけであるから,被告パズル
Hを原告パズルHの複製ないし翻案ということはできない。
なお,原告パズルHは,このような着想に従って円柱状のケーキを8等分
するのであれば,ナイフを3回使えば足りるにもかかわらず,8等分する準
備として,ケーキの表面の文字をそぎ落とすこととし,そのために1回多く
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ナイフを使うこととしている(全部で4回ナイフを使うこととしている)点
において,作者の個性が表現されたパズルとなっていると認められる。しか
し,ナイフを3回使用するとの被告パズルHは,ナイフを4回使用してケー
キの表面の文字をそぎ落とすとした点に表現上の特徴がある原告パズルHと
実質的に同一といえないことは明らかであるし,そのような原告パズルHの
表現上の本質的な特徴を直接感得することもできないというべきである。
そうすると,いずれにしても,被告パズルHは,原告パズルHの複製にも,
翻案にも当たらないから,複製権侵害も,翻案権侵害も認められない。
(10) 原告パズルIについて
原告パズルIは,マッチ棒5本又は4.5本(0.5本とは,1本のマッ
チ棒を半分の長さに折った一方のこと)で,3通りの円に関する字(「¥」,
「エン」,「円」)又は円の形(マッチ棒を一直線に並べて頭の方から見た形)
を作らせるという問題である。
これに対し,被告パズルIは,マッチ棒5本で「¥」という字を作らせる
問題である。
このようなマッチ棒5本で円に関する字を作るというパズルは,平成3年
発表の原告パズルIより以前から存在し,例えば,昭和59年発行の芳ヶ原
伸之著「奇想天外パズル」(光文社発行)には,マッチ棒5本で円を作ると
いう問題(解答においては,「¥」を完全な円とし,中央に縦に置いたマッ
チ棒が上方に飛び出た「円」や,「エン」は完全とは言えないとする。)が
掲載されている(乙14)。
以上を踏まえて検討するに,マッチ棒5本で円を作るというパズル自体は
従来から知られていたものであり,原告パズルIと被告パズルIとで共通す
る「¥」という字をマッチ棒5本で作成すること自体は,アイデアそのもの
であり,これを特定の者に独占させることが相当ではないことは明らかであ
る。したがって,被告パズルIは,原告パズルIの複製とも翻案とも認める
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ことはできない。
また,原告パズルIは,マッチ棒5本で「¥」,「エン」,4.5本で「円」
という字を作成し,これに加えて,「一直線に並べて頭の方から見る」とい
う4通りの解答を答えさせる点や,問題文の具体的表現において,作者の個
性が表現された創作的な表現であると認められるものの,被告パズルIは,
「¥」のみを解答させる問題である点で原告パズルIと相違し,問題文の具
体的表現も原告パズルIとは異なっており,4通りの解答を答えさせる点を
表現上の特徴とする原告パズルIと実質的に同一といえないことは明らかで
あるし,そのような原告パズルIの表現上の本質的な特徴を直接感得するこ
ともできないというべきである。
そうすると,いずれにしても,被告パズルIは,原告パズルIの複製にも,
翻案にも当たらないから,複製権侵害も,翻案権侵害も認められない。






