(ア) 「IMPRESSION」の語は,「印象」の意味を有しており,
服飾関係において商品の内容や品質を表すものでもなく,一般的に識別
力が低いというわけではない。他方,「CLEAR」の語は,それ単独
で使用されるときには「目標を達成すること」の意で用いられることも
多いが,後に名詞が続く場合には,その名詞を修飾して「明るい」「澄
み渡った」「透き通った」という性質・内容を表す言葉であり,それゆ
えに「クリア○○」とか「クリアな○○」という使い方も日常的にされ,
「clear」を語頭部に有する商標も多数存在している。このことか
らすると,「clear」は,名詞と結びついた場合の識別力はさして
高くないということができる。そして「CLEAR IMPRESSI
ON」の場合も,「明るい印象」「澄み渡った印象」「透き通った印象」
というまとまった観念を生じさせるものである。これらからすると,
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「IMPRESSION」の語が,「CLEAR」の付加語であるとの
印象を生じさせるものとはいえず,「IMPRESSION」の識別力
が低いとはいえない。
原告ブランドが需要者の間に広く知られていると認められることは前
記認定のとおりであるが,原告ブランドが周知性を有するのは単一の
「clear」としてなのであって,「clear」の語が上記のよう
に様々な名詞と結びついてその性質・内容を表す意味を有するものであ
ることからすると,「clear」が広く知られているからといって,
それが意味上の関連性を持って名詞と結びつき,しかもその結びつく名
詞がそれ自体として識別力を有する場合にまで,その結合商標が「cl
ear」のみによって識別されるということはできない。
(イ) また,原告ブランドも被告ブランドも,その需要層は20代の女性
を含む点で共通しているが,原告ブランドは,前記のとおり,関西地方
にある「神戸エレガンス」,「神戸系」のセレクトショップ及びそこが
提供する服飾のブランドという個性をもって,広く知られるに至ってい
たものと認められる。これに対し,被告ブランドは,多数の服飾ブラン
ドを擁し,レディスアパレル業界の売上高が8位である被告が,従来か
ら存した「エ・ピウス・プレイス」をリニューアルする形で,当初から
全国的に展開したもので,そのデザイン上の特徴も,「神戸系」に対抗
して打ち出された「東京エレガンス系」に近いものである。原告ブラン
ドと被告ブランドに共通する需要者である20代の女性は,特にファッ
ションやブランドに敏感であることからすると,両者のブランドにこの
ような性質上の差異が存するにもかかわらず,単に「clear(CL
EAR)」の語が共通することから,被告ブランドを原告ブランドのサ
ブブランドであると一般に認識するとは認め難い。
(ウ) もっとも,インターネット上では,被告のことを単に「クリア」と
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呼んでいる例もあり,実際にも原告の店舗等に被告ブランドの商品の問
合せがされた例があることは先に認定したとおりである。しかし,それ
らの個別事例があるからといって,被告標章が一般的に「クリア」と称
呼されると認めることはできない。
また,被告の関連会社である株式会社イネドが商標登録出願した被告
標章2について,特許庁が本件原告商標と類似し,混同のおそれがある
ことを理由に拒絶理由通知をしたことは前記のとおりであるが,この出
願に対する拒絶査定が確定したわけではない上,他方で被告標章2より
も本件原告商標との類似度が高いと考えられる「clear-for
t」商標については,原告ブランドが周知となった後にも登録が認めら
れているから,上記のような拒絶理由通知が発せられたことを重視する
ことはできない。
(エ) したがって,被告が被告標章の使用を開始した平成16年秋の時点
において,被告標章2ないし5の要部が「CLEAR」であると認める
ことはできない。
また,その後について検討してみても,被告は,被告標章の使用を開
始した後,全国の被告ブランドの取扱店舗を増加させ,それに伴い被告
ブランドの売上げも急増しており,宣伝広告も行っているのであって,
被告ブランドの認知度は急速に高まっていると認められるから,現時点
においては,なおさら被告標章2ないし5の要部が「CLEAR」であ
ると認めることはできない。
エ以上より,被告標章1は本件原告商標に類似するが,被告標章2ないし
5は本件原告商標に類似しない。したがって,原告の本件原告商標権に基
づく被告標章2ないし5に関する請求は,その余について判断するまでも
なく理由がない。
また,原告の本件原告商標権に基づく被告標章1に関する請求について
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は,被告は被告標章1を前記JJ誌上でのタイアップ広告でのみ使用した
のであるから,その広告等への使用差止請求は理由がある(なお,被告が
洋服,コート,セーター類,服飾雑貨,身飾品,ハンドバッグ,袋物以外
の,靴や帽子に被告標章を使用していることを認める的確な証拠がないが,
被告がそれらにも使用するおそれは十分に認められる。)が,被告標章1
を被服等に付することや同標章を付した被服等を販売すること等の差止請
求及び同標章を付した商品等からの同標章の抹消等の請求は理由がない。
3 争点(2)ア(本件原告商標の周知商品等表示性),同イ(被告標章1,4及
び5の使用の有無)及び同ウ(本件原告商標と被告標章の類否)について
先に1及び2で述べたところからすると,被告は,本件原告商標は原告の周
知商品等表示であると認められるところ,被告標章1は本件原告商標と類似す
ると認められるが,被告標章2ないし5は本件原告商標と類似するとは認めら
れない。
したがって,原告の不正競争防止法に基づく被告標章2ないし5に関する請
求は,その余について判断するまでもなく理由がない。