2 審決の理由
別紙審決書の写し記載のとおりである。すなわち,本件商標は,第38
類「移動体電話による通信,電子計算機端末による通信,電子計算機端末に
よる通信ネットワークへの接続の提供」を指定役務として,「iモード」の
文字を標準文字で表してなる商標であるとした上で,①本件商標を付した携
帯電話の構成要素及び実施形態は,原告の有する本件各特許権を侵害してい
るので,商標法29条1項(判決注・「商標法29条」の趣旨)に該当する
との無効理由による本件審判請求は,商標法46条1項各号に列挙された事
由以外の事由による不適法な請求であって,補正することができないので,
- 3 -
却下すべきである,②本件商標は,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそ
れがある商標」(商標法4条1項7号)には該当しない,③本件商標は商標
法4条1項19号に該当するとの原告の主張は,新たに無効理由を追加し,
請求の理由の要旨を変更するものであるから,商標法56条1項で準用する
特許法131条の2第1項により認められないので,本件商標登録は,商標
法46条1項の規定により無効とすることはできない,というものである。
第3 当事者の主張
原告主張の審決の取消事由は,訴状の「請求の原因」の3の(8)(8頁末行
~10頁末行)に記載されているとおりである(該当部分を判決末尾に別
紙「原告の主張」として添付する。)。
これに対し,被告は,本件商標が商標法4条1項7号に該当するかどうか
は,本件商標が使用される対象の移動体電話(「iモード対応」端末)によ
り判断されるべきでなく,本件商標の構成のみによって判断されるべきであ
るから,審決に誤りはないとして,原告の主張を否認した。
第4 当裁判所の判断
1 審決の取消事由の有無
別紙「原告の主張」によれば,原告は,審決には,本件商標の商標法4条
1項7号該当性等の判断の誤りがあることなどを取消事由として主張してい
るものと解される。しかし,当裁判所は,以下のとおりの理由により,原告
主張に係る取消事由はいずれも失当であると判断する。
(1) 商標法4条1項7号該当性について
原告の主張は必ずしも明らかではないが,原告は,「iモード」の標章
を使用して,対応端末「デジタル・ムーバーF501i HYPER」を発売
したり,同対応端末の画面操作やインターネットを介してメールの交換等
をさせたりする被告の行為が原告の有する本件各特許権を侵害することに
なるので,本件商標は,「他の法律によって,その使用等が禁止されてい
- 4 -
る商標」,「一般に国際信義に反する商標」,「構成自体に問題がなくて
も,指定商品について使用することが社会公共の利益や一般的道徳観念に
反することとなる商標」として,商標法4条1項7号に規定する「公の秩
序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するから,本件商標
登録には無効理由があると主張しているものと解される。
しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。
すなわち,商標が商標法4条1項7号に該当するかどうかは,特段の事
情のない限り,当該商標の構成を基礎として判断されるべきものであり,
指定商品又は指定役務についての当該商標の使用態様が他人の権利を侵害
するか否かを含めて判断されるべきものではない(立体的形状の商標の使
用が他人の物の発明に係る特許権や他人の意匠権に抵触する場合などにお
いても,立体的形状自体が商標を構成するから,商標の構成のみによって
判断されるべき場合の例外には該当しない。)。特に,商標法29条にお
いて,商標権者による登録商標の使用が,その使用の態様により出願日前
の出願に係る他人の特許権等と抵触するときには,指定商品又は指定役務
のうち抵触する部分についてその態様により登録商標の使用をすることが
できないと定められ,知的財産権相互の調整が図られていること等に照ら
すならば,指定商品又は指定役務についての商標の使用態様によって他人
の特許権等を侵害することがあったとしても,すなわち,そのような使用
がされたり,あるいはそのような使用がされる事態が想定される状況等が
あったとしても,そのことから直ちに当該商標が,「公の秩序又は善良の
風俗を害するおそれがある商標」に該当するものと判断すべきではないと
いえる。
本件においてこれをみると,本件商標は,「iモード」を標準文字で表
す構成からなる典型的な文字商標であって,本件商標の構成・内容から,
他人の特許権等を侵害するものということはできない。そうすると,原告
- 5 -
主張に係る本件商標の使用が原告の有する本件各特許権に抵触するという
理由をもって,本件商標が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあ
る商標」に該当するということはできず,この点の原告の主張は失当であ
る。