知的財産権やビジネス・企業法務Q&A続々更新!大阪弁護士会所属弁護士川内康雄 顧問弁護士
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2006年11月の15件の記事

平成20年(ネ)第10006号損害賠償等請求控訴事件3

 結論

以上によれば,原告の被告に対する本訴請求をいずれも棄却すべきものとし

た原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,

主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第3部

裁判長裁判官飯村敏明

裁判官中平健

裁判官上田洋幸

- 18 -

(別紙)

文書内容目録

1.特願平11-248617号及び特願2001-361236号の特許出願

に係る発明は,審査官の判断を待たずとも,特許性が無きものであることは誰

の目にも明白である

2.原告の特許取得は99.9%以上と表現できる程に不可能である

3.原告が補正・意見書を提出しているのは,審査中という実態を営業に活かす

ための時間引き延ばし策である

__

労災保険の一括:当社は建設業を営んでおり、事業の遂行に際しては多くの下請業者を使用しています。労災保険の加入にあたり、請負事業ですので、下請労働者も含めて労災に加入しています。保険料の算定のため、下請業者には各労働者の賃金の内容を教えてもらっているのですが、個人情報保護法上問題は発生しますか?

賃金の情報がそれが氏名を伴っている場合には当然に個人情報に該当します。多くの場合賃金情報はデータベース化されているでしょうから、これを他の事業者に提供する場合には、法律上の原則からすると本人の同意が必要となりそうです(個人情報保護法23条)。
もっとも請負事業を一括して取り扱わなければいけないのは、労働保険の保険料の徴収等に関する法律第8条の規定が存在しているからです。個人情報保護法23条1項1号では「法律の規定」にもとづく第三者提供については本人の同意は不要とされています。提供が法的な義務と明記されているわけではない場合にこの条項が適用できるかどうかについて定まった解釈は無いようですが、当職の私見としては適用可能と考えています。そのため労災保険適用のための提供であれば、下請労働者の個別の同意が無くても、提供・受領可能でしょう。
もっとも賃金総額による概算方式も制定されていることを考え合わせると、下請事業者が労働者の情報を提供する義務まではないでしょうから、無理矢理提出を請求することはできないでしょうし、個人情報保護に関する契約や覚書の締結を交換条件として要求される場合もあり得るのではないかと思われます。

当選発表:当社は写真をテーマにした雑誌を発行している会社で、毎年フォトコンテストを開催しています。当選した応募者の氏名を雑誌に掲載したり、ポスターに掲示したりするのですが、個人情報保護法上問題が生じるのでしょうか。

個人情報保護法上、報道関係の事業は適用除外とされており、規制の適用の有無を問題とする必要はありませんが、雑誌社はこの範疇には入りませんので、法令該当性の有無を検討する必要があります。
個人の氏名は経済産業省ガイドライン上はそれだけで個人情報保護法上の個人情報に該当するものとされています。そしてこれを雑誌に掲載したり、ポスターに掲示したりすれば、第三者に提供することとなりますので、予め本人の同意を得る必要があります。この点、コンテストの結果が発表されることはある意味当然事ですから、何らの措置をとっていなくても、本人の同意を推定することも不可能ではないでしょう。もっとも本人や監督官庁との無用のトラブルを避けるためには、申込書に個人情報の取扱についての同意事項を記載したり、「コンテストの結果は当誌に当選者の氏名を掲示して行います。」などを記載し、本人の同意を推定できる状況を作ったりしておくことが望ましいでしょう。
なおコンテストの参加者が5000名に満たなくても、主催者が個人情報取扱事業者に該当していれば、個人情報の適用がありますので注意が必要です。

第三者提供:経産省ガイドラインに、第三者提供とならない事例として、「同一事業者内で他部門へ個人データを提供すること」が挙げられています。例えば、私が名刺を元に作成したエクセルの個人情報データベースに登録されているお客さんの氏名・メールアドレスを同僚に渡しても良いのでしょうか。

第三者提供とは、個人情報を、個人法人を問わず、ある法的な主体から別の法的主体に移動させることです。そのため一つの法的主体の中で移動する分には第三者提供になりません。あなた個人が個人情報取扱事業者に該当していないことを前提とすれば、同僚に個人情報を渡すことが第三者提供となることはありません。もちろんかかる情報の提供が個人情報の利用目的に合致しているかという点と、プライバシーポリシーや各種の機密保持契約の条項に違反していないかは別途検討が必要です。

第三者提供:当方幼稚園を経営しております。父母の方々にお見せするために、教室の状況をリアルタイムでストリーミング配信することを計画中です。個人情報保護法上問題が発生するでしょうか?

経済産業省のガイドラインでは個人が特定できる映像情報も個人情報であるとされています。そして未成年者や幼児の情報であっても個人情報となりますので、教室の状況を撮影すれば、幼稚園は自らが主体となって園児の個人情報を収集していることになります。そしてこの情報をストリーミング配信すれば、本人(園児)以外の法的主体に個人情報が提供されることになりますので第三者提供となります。
すると個人情報保護法上利用目的の明示及び第三者提供にあたっての同意を得ることが必要となりますが、園児本人には判断能力が無いため同意の取得は無意味です。そのため法定代理人から同意を取得する必要があります。この点JIS Q15001でも、子供の個人情報の利用については保護者から同意を得ることが要求されています。
なおどの園児も撮影される可能性があり、またどの園児の父兄もこれを閲覧する可能性がある以上、保護者からの同意の取得にあたっては、「自分の子供の映像が他の父兄も閲覧できる状態になる」ことを前提として、対象となっている教室の園児全員の父兄から同意を取得する必要があるでしょう。
なおこれはあくまでも第三者提供に対する同意の取得の問題ですので、利用目的の様に、単に通知するだけでは足りませんので注意が必要です。

第三者提供:ある通信会社の商品の営業代行を行っています。顧客から回収した申込書を、別の商社を介して、通信会社に渡しています。このように情報をいったん商社に渡すことには問題がありますか?

情報を第三者に提供する際に、宅配業者等、情報の中身に全くふれることのない第三者が介在しても、この第三者は、いわゆる使者であり、個人情報保護法上の第三者には該当しないでしょう。しかしご質問の商社はその情報について自己利用目的があるものと思われますので単なる使者と評価するのは困難でしょう。そのため顧客から個人情報を預かる際に第三者提供についての同意を得るか、オプトアウト手続きを利用する必要があります。

平成19年(行ケ)第10405号審決取消請求事件3

 取消事由1(商標法3条1項3号該当性の判断の誤り)について

(1) 立体商標における商品等の形状

ア商標法は,商標登録を受けようとする商標が,立体的形状(文字,図

形,記号若しくは色彩又はこれらの結合との結合を含む。)からなる場合

についても,所定の要件を満たす限り,登録を受けることができる旨規定

する(商標法2条1項,5条2項参照)。

ところで,商標法は,3条1項3号で「その商品の産地,販売地,品

質,原材料,効能,用途,数量,形状(包装の形状を含む。),価格若し

くは生産若しくは使用の方法若しくは時期又はその役務の提供の場所,

質,提供の用に供する物,効能,用途,数量,態様,価格若しくは提供の

方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商

標」は,商標登録を受けることができない旨を,同条2項で「前項第3号

から第5号までに該当する商標であっても,使用をされた結果需要者が何

人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものに

ついては,同項の規定にかかわらず,商標登録を受けることができる」旨

を,4条1項18号で「商品又は商品の包装の形状であって,その商品又

- 7 -

は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商

標」は,同法3条の規定にかかわらず商標登録を受けることができない旨

を,26条1項5号で「商品又は商品の包装の形状であって,その商品又

は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商

標」に対しては,商標権の効力は及ばない旨を,それぞれ規定している。

このように,商標法は,商品等の立体的形状の登録の適格性について,

平面的に表示される標章における一般的な原則を変更するものではない

が,同法4条1項18号において,商品及び商品の包装の機能を確保する

ために不可欠な立体的形状のみからなる商標については,登録を受けられ

ないものとし,同法3条2項の適用を排除していること等に照らすと,商

品等の立体的形状のうち,その機能を確保するために不可欠な立体的形状

については,特定の者に独占させることを許さないとしているものと理解

される。

そうすると,商品等の機能を確保するために不可欠とまでは評価されな

い形状については,商品等の機能を効果的に発揮させ,商品等の美感を追

求する目的により選択される形状であっても,商品・役務の出所を表示

し,自他商品・役務を識別する標識として用いられるものであれば,立体

商標として登録される可能性が一律的に否定されると解すべきではなく(

もっとも,以下のイで述べるように,識別機能が肯定されるためには厳格

な基準を充たす必要があることはいうまでもない。),また,出願に係る

立体商標を使用した結果,その形状が自他商品識別力を獲得することにな

れば,商標登録の対象とされ得ることに格別の支障はないというべきであ

る。

イ以上を前提として,まず,立体商標における商品等の立体的形状が商標

法3条1項3号に該当するか否かについて考察する。

() 商品等の形状は,多くの場合,商品等に期待される機能をより効果

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的に発揮させたり,商品等の美感をより優れたものとするなどの目的で

選択されるものであって,商品・役務の出所を表示し,自他商品・役務

を識別する標識として用いられるものは少ないといえる。このように,

商品等の製造者,供給者の観点からすれば,商品等の形状は,多くの場

合,それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するも

の,すなわち,商標としての機能を有するものとして採用するものでは

ないといえる。また,商品等の形状を見る需要者の観点からしても,商

品等の形状は,文字,図形,記号等により平面的に表示される標章とは

異なり,商品の機能や美感を際立たせるために選択されたものと認識

し,出所表示識別のために選択されたものとは認識しない場合が多いと

いえる。

そうすると,商品等の形状は,多くの場合に,商品等の機能又は美感

に資することを目的として採用されるものであり,客観的に見て,その

ような目的のために採用されると認められる形状は,特段の事情のない

限り,商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからな

る商標として,同号に該当すると解するのが相当である。

() また,商品等の具体的形状は,商品等の機能又は美感に資すること

を目的として採用されるが,一方で,当該商品の用途,性質等に基づく

制約の下で,通常は,ある程度の選択の幅があるといえる。しかし,同

種の商品等について,機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し

得る範囲のものであれば,当該形状が特徴を有していたとしても,商品

等の機能又は美感に資することを目的とする形状として,同号に該当す

るものというべきである。

けだし,商品等の機能又は美感に資することを目的とする形状は,同

種の商品等に関与する者が当該形状を使用することを欲するものである

から,先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定の者に独

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占させることは,公益上の観点から適切でないからである。

() さらに,需要者において予測し得ないような斬新な形状の商品等で

あったとしても,当該形状が専ら商品等の機能向上の観点から選択され

たものであるときには,商標法4条1項18号の趣旨を勘案すれば,商

標法3条1項3号に該当するというべきである。

けだし,商品等が同種の商品等に見られない独特の形状を有する場合

に,商品等の機能の観点からは発明ないし考案として,商品等の美感の

観点からは意匠として,それぞれ特許法・実用新案法ないし意匠法の定

める要件を備えれば,その限りおいて独占権が付与されることがあり得

るが,これらの法の保護の対象になり得る形状について,商標権によっ

て保護を与えることは,商標権は存続期間の更新を繰り返すことにより

半永久的に保有することができる点を踏まえると,商品等の形状につい

て,特許法,意匠法等による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の

者に独占権を認める結果を生じさせることになり,自由競争の不当な制

限に当たり公益に反するからである。

(2) 本願商標の商標法3条1項3号該当性

アギターの種類及び構造について

本願商標は,弦楽器(部品及び附属品を除く)を指定商品とするもので

ある。証拠(乙1の1ないし6)によると,弦楽器に含まれるギターの種

類及び構造は,下記のとおりと認められる。

() ギターには,①弦の振動を電気信号に変換し,アンプを通して音を

出す「エレクトリック・ギター」,②電気を通さないナマ音だけで鳴ら

す「アコースティック・ギター」,③アコースティック・ギターにピッ

クアップ(弦の振動を電気信号に変換するパーツ)を取りつけた「エレ

クトリック・アコースティック・ギター」がある。

() ギターを構成している主な部品(パーツ)は,以下のとおりであ

- 10 -

る。① ヘッド

ギターの頭部でネックの先端の部分。ペグ(弦を巻きつけて固定す

ると同時に,締めたり緩めたりすることによってチューニングするパ

ーツ)が取りつけられ,弦のテンション(張力)を確保する役割を果

たす。ヘッドにはメーカーのロゴが書かれることが多い。

 ネック

弦を押さえて音程を決定する部分である。なおネックには6本の弦

が配される。

 ボディー

ギターの本体であり,弦の振動を共鳴させるという重要な役割を担

い,内部に空洞部分のないソリッド・ボディーと,中空のホロー・ボ

ディとがあり,また,トップが平らなものはフラット・トップ,中央

が緩やかに盛り上がっているものはアーチ・トップと呼ばれる。ボデ

ィーの一部をカットするカッタウェイという加工が施される場合があ

り,片側だけをカットしたものをシングル・カッタウェイ,両側をカ

ットしたものをダブル・カッタウェイと呼ばれる。

 ブリッジ(駒)

ボディー上で弦を支え,その振動をボディーに伝えるパーツ。テイ

ルピース(弦のボール・エンドを固定するパーツ)とブリッジとが一

体となっている一体型と,別になっている独立型がある。

ブリッジは,左右のネジで弦高(フレットからの弦の高さ)を調整

することができる。また,サドル部分では,ネジを回してサドルを前

後に移動させて,オクターヴ・ピッチを調整することができる。

イ本願商標の構成

本願商標は,別紙「商標目録」記載のとおりの以下の構成よりなるもの

であり(甲30),これによれば,本願商標は,指定商品「弦楽器(部品

- 11 -

及び附属品を除く。)」を構成するブリッジの立体的形状に係るものであ

り,同形状は,次のような特徴を有している。

 本体は,正面視では略長方形で,縦線が円弧状となっており,側面視

では略台形でその上部は円弧状となっており,本体の左右にはマイナス

の溝のあるボルトを2個配していること。

 本体の左右には,8個(2個は,本体に隠れているが,本願商標に係

るブリッジの分解写真(乙8)より8個と認める。)の扇状の図形がそ

のボルトを中心にして円形に配され,花びら様の外観を呈しているこ

と。

 本体の左右に設置された2個のボルトの間には,それよりやや小さい

6個の,同じく頭部が円形でマイナスの溝のあるボルトと,六角形のナ

ットと,そのボルトには四角形の部品(サドル)が接続されているこ

と。

ウ本願商標は,指定商品である弦楽器に含まれるギターの構成部分である

ブリッジの立体形状である。ところで,①本体の正面視が略長方形で縦線

が円弧状であることは,ギターのブリッジの通常の形状であり(甲11な

いし14,乙3,7),②左右にマイナスの溝のあるボルトを2個配して

いることは,弦高を調整するための機能上から採用された形状であり,③

2個のボルトには扇状の8個の図形が円形に配された花びら様の形状とし

たことは,美感上の観点から採用されたものと推認されるが,その選択に

さほど特徴があるとはいえず,④6個のボルト及びナットでサドルを接続

したことは6弦のギターのブリッジとしての機能を果たすためのものであ

るといえる(原告作成の「ゼマティスギター」のカタログ(乙8)に

も,「ブリッジは,太いスタッド・スクリューとフラワー・ナットによっ

て確実に固定され,ガタ付きや脱落といった問題点がなく,弦振動を確実

にボディへ伝達します。デュラルミンから削りだして作られたこのブリッ

- 12 -

ジとテールピースは,優雅なデザインと機能美を兼備え」との記載があ

る。)。

上記のとおり,本願商標の各特徴は,いずれも商品の機能又は美感に資

することを目的とするものであり,ギターのブリッジについて採用される

場合に,通常予測される範囲内の形状といえる。また,前記ア認定のとお

り,弦楽器に含まれるギターにおいて,需要者の目を惹くのはブリッジよ

りも,むしろギターの大部分を占めるカッタウェイを施したボディ部やヘ

ッド部(メーカーの名称等が記載される場合が多い。)であるといえる。

したがって,本願商標を指定商品「弦楽器」に付した場合に,需要者は,

本願商標を,専ら上記指定商品を構成するブリッジであると認識し,指定

商品の出所を表示する標識と認識することはないと解するのが自然であ

る。

なお,原告は,本願商標に係る指定商品は,「弦楽器(部品及び附属品

を除く。)」であり,ブリッジ等の部品,附属品は除外されているにもか

かわらず,審決が,商標法3条1項3号該当性の判断に当たり,「弦楽器

用駒(ブリッジ)」との関係において判断した点に誤りがあると主張す

る。しかし,前記アで認定したとおり,本願商標が弦楽器のブリッジとし

てごく一般的に採用し得る範囲内の形状のものであること,「弦楽器」(

例えばギター)には,ボディー,ヘッド等と共に,ブリッジも構成要素で

あること,そうすると,ブリッジを構成要素とする「弦楽器」の商標とし

てもごく一般的に採用される形状といえることは前記説示のとおりであ

る。したがって,審決は,商標法3条1項3号該当性の判断に当たり,そ

の指定商品「弦楽器」との関係において判断したものであるといえる。原

告のこの点の主張は失当である。

エ以上のとおりであるから,本願商標は,商品等の形状を普通に用いられ

る方法で使用する標章のみからなる商標として,商標法3条1項3号に該

- 13 -

当するものというべきである。

第三者提供の同意:個人情報の第三者提供に関する同意を本人から取得する際には、承諾書にサインをしてもらう必要がありますか。それとも口頭でいいですか?

法律上、第三者提供に関する同意については、書面で取得することが要求されているわけではありません。同意する旨を口頭で伝えられた場合でも、この法律上は有効な同意となります。ただし後々紛争となった場合に、口頭で伝えられただけでは、同意したことの証拠が残りませんので、不利な立場になるおそれがあります。そのため業務上可能であれば、書面で取得する方が望ましいでしょう。

メールの転送の可否:電子メールは受取人が簡単に転送できますが、差出人の同意を得ない転送すると、プライバシーを侵害したり、その他の規制(通信の秘密や個人情報保護法)に違したりすることになるのでしょうか。

受け取った電子メールは、郵送による手紙とは異なり、受取人が簡単に転送できます。しか権利関係やその他の法律問題を分析するにあたっては、通常の手紙と同様の注意が必要す。

プライバシーについて

まずプライバシーの問題については、当該電子メールの内容が、
 1 私生活上の事柄又は私生活上の事柄らしくうけとられる事柄(私事性)
 2 一般人の感受性を基準として、他人に知られたくないと考えられる事柄(秘匿性)
 3 いまだ他人に知られていない事柄(非公知性)
(「宴のあと」事件判例による要件)
の条件を満たすのであれば、判例上でいうところのプライバシーにあたります。
もっともメールはメールを送信している時点でこの内容を少なくとも受信者には公開してい時点で秘匿性・非公知性が低く、また、単にメールを転送したのみでは、メールの内容を世間に公表したわけではありませんので、たたちにプライバシー権侵害となることは少ないでしょう。メールに記載されている事項が、一般人の感受性を基準とすれば、転送を望まない事項であることが明らかな場合や、メールの発信者と受信者の人的関係や従前のやりとりから当該メールの内容を第三者に開示しないことが当事者間での前提・約束となっている場合や転送先がメーリングリストである場合に、プライバシーの侵害になると思われます。
平たく言えば「普通は転送されたくないだろうな」と思うようなメールであれば転送しないということになるでしょう。

個人情報保護法について

メールに氏名・住所・所属やメールアドレスが記載されている場合、多くの場合は特定の個人を識別できます。そのため多くの場合はメール全体が個人情報となるでしょう。そしてこれを転送する場合には、同法23条の第三者提供の規制に抵触しないかが問題となります。
もっとも同条の規制対象となるのは同法の規定する「個人データ」つまりデータベース化された個人情報のみです。単にメールソフトのメールボックス内に蓄積されている電子メールが個人データと判断される可能性は少ないでしょう。結果、少なくとも同意を得ずにメールを転送したとしても、同法に違反するということはありません。
ただしメールをなんらかの形で検索を容易にするために体系化している場合、たとえば多数の顧客とのやりとりのメールを印刷し、顧客毎に時系列順にファイリングしている場合などは、個人データに該当してしまい、同条の適用を検討しなければいけません。
まず企業内の別の担当者に転送するような場合には、当初のメールがおよそ企業に向けられた個人情報の送信と考えられることが多いことから、このような転送はそもそも第三者に転送したことにはならない場合が多いでしょう。
一方、企業外の第三者に転送する場合には、多くの場合、この規定の形式的な要件には該当するでしょう。個人情報保護法はプライバシー権とはことなり、対象となっている情報が、私事性、秘匿性、非公知性を問いません。そのためとにかく個人情報が入っていれば、その内容を問わないためです。
結果、転送については同意が必要と言うことになります。もっとも同法の同意は書面によることは要求されていません。そのためおよそ企業間のメールのやりとりであれば、送信者が転送について黙示に同意していると認められる場合も多いでしょう。また業務の委託先への転送であれば、第三者提供の規制の例外となっており、同意の取得は不要です。

通信の秘密について

通信の秘密については、そもそもこれを遵守する義務を負っているのは国や電気通信事業者に限られます。また対象となる通信は電気通信役務の受け手である第三者間で行われている通信をいいます。そのため国や電気通信事業者であっても、自身の日常の事務のために職員・社員がやりとりしているメールについてはやはり対象となりません。

その他の法令

不正競争防止法では営業秘密の保護が規定されており、たとえば営業秘密が含まれているようなメールを転送してしまうと。同法に違反してしまうことになります。また公務員であれば、メールの転送により各法令・条例で規定されている公務員としての守秘義務を犯してしまうおそれがあり注意が必要です。

子会社等への第三者提供:自社の社員の氏名などの個人情報を保険会社に提供したり、保険代理店に社内で保険募集を行わせる場合には、社員の同意が必要ですか。

保険会社やその代理店は、事実上の便宜の見返りに、営業対象となる個人のリストを提供を求めてくることがよくあります。しかし保険会社やその代理店は、自社からみれば個人情報保護法第23条の第三者に該当します。また同条の例外規定の適用も原則としてはありません。そのため情報の提供に際しては、社員個人からの同意が必要となります。オプトアウト規定や共同利用規定を利用することができれば同意が不要となりますが、提供先が個人情報を営業目的に利用するような場合には、これらの規定に依拠することはあまり望ましくないでしょう。
一方、会社が許諾するのであれば、代理店に会社内で営業を行わせることは可能です。社員が代理店に保険申し込みをしたとしても、これはあくまでも社員から代理店や保険会社に直接個人情報が提供されたことになりますので、第三者提供における同意は必要ありません。しかし代理店の営業行為にあたって会社が社員の個人情報を提供する場合には、やはり個人情報を第三者提供していることになりますので、社員から同意を得ることが必要になります。

労働債務不履行:「すぐに働ける人」という条件で採用募集を行い、応募してきた方数名の中から1名を採用しました。ところが採用を決定した後になって、「実はすぐには働けない」と言われました。この人に何か損害の賠償を請求することはできますか。

一旦労働契約を締結すれば、雇用者には賃金の支払義務が発生する一方、労働者には労務の提供義務が発生します。労働者が当初の契約の前提となっていた労務を正当な理由無く拒む場合には、労働債務の不履行となり、これにより発生した損害を請求できる可能性があります。たとえば当該労働者が労務を提供しなかったことにより事業上発生した逸失利益や、再度の募集が必要になった場合にはその費用などが損害となります。ただし他の人を雇った場合に賃金については、欠勤した当人に支払わなくても良い以上、差額がない限りは損害となりません。

機密保持契約:当社は食品卸業を営んでいます。継続的な営業の結果、ある大口の客先との契約が取れそうになりました。この経緯を当社のある株主に報告したのですが、この株主が客先に連絡を取ってしまい、結果、客先が不審がって今回の契約が破談になりました。この株主とは機密保持契約を締結しているのですが、今回の損害の賠償の請求をすることができるのでしょうか。

損害賠償の請求をするにあたっては3つの問題を検討しなければいけません。まず機密保持契約を締結しているとのことですが、多くの機密保持契約は契約上機密となる範囲が限定されています。そのため契約を検討し、営業上の報告内容が機密保持義務の対象となっているかをまず調査しなければいけません。
次に今回契約を締結できなかった原因が、他の何らかの要因ではなく、まさにその株主が連絡を取ったことにあることが立証できることが必要です。訴訟上この点を立証するのは必ずしも容易ではありません。
最後にこの契約が取れなかった事による損害を立証できることが必要です。損害の内容はこの契約が取れていた場合の利益という事になりますが、将来のことであり、仮定的要素を含みますので、合理的な判断材料がそろわない限りは、立証したと見なされません。
このように御質問のようなケースでは訴えて賠償請求するのは不可能ではないが困難を伴うという結論になると思われます。

古物営業と宅建業:居抜きの賃貸物件(店舗)を扱うビジネスを始めようと思っています。これは古物営業でしょうか、それとも宅建業(宅地建物取引業)でしょうか。

不動産は古物営業法上古物として扱われませんので、居抜き物件を取り扱っても通常は古物営業となることはなく、一般的な宅建業として業務を行うことになります。もっとも居抜き店舗を扱う際に、従物を独立して売買する場合には宅建業の他に古物営業の許可の取得が必要となる場合があります。居抜きの店舗であれば、店舗に物理的に付着はしていないが、店舗で使うものが想定されるものが従物となります。移動可能なテーブルや椅子が該当するでしょう。

秘密保持契約:当社では秘密保持契約書を締結する場合に、単に秘密保持契約書だけを締結する場合と、取引契約書を別途締結し、この契約に関わる情報を秘密情報として特定した上で秘密保持契約書を作成する場合があります。それぞれの方法についてのメリット・デメリットはなんでしょうか。

契約自由の原則の下、秘密保持契約の対象事項を限定することも可能ですし、包括的な秘密保持契約を締結することも可能です。いずれの方式をとるかについては、自社の機密情報と相手方の秘密情報の重要度、自社からの情報提供量と相手方からの情報提供量を比較し、また、取引に付随しない情報のやりとりがあるかどうかを総合的に検討しなければいけません。情報を渡す側であれば包括的な契約の方が望ましいという事になりますし、情報をもらう側であれば限定的な契約の方が望ましいと言うことになります。
なお包括的な秘密保持契約とする場合でも、対象事項については、「秘密であることを明示したもの」に対象事項を限定したり、例外事項を定めたりすることにより、対象を範囲を大幅に絞ることは可能です。義務が重くなりすぎるようであればこの点工夫すべきでしょう。

覚書の法的効力:取引上、「覚書」というタイトルで文書を取り交わすことがよくあります。この「覚書」という体裁は、他に取引の基本となる契約書を締結した後でないと効力は発生しないものなのでしょうか。

合意事項を記載した書面について、タイトルを「契約書」とするか、「覚書」とするかによって法的な効力が変わることはありません。また締結にあたっても、「契約書」を作成した後、その修正や条項の追加という意味で「覚書」を作成することもできますし、単に「覚書」のみを作成して、当事者間の合意事項を全て記載するということも可能です。どちらも法的な効力に違いはありません。
もっとも「契約書」と「覚書」を別の書面としている場合で、客観的に別の合意事項と判断できる場合には、それぞれ独立して契約の解除が可能になります。この点はビジネス上メリットになる場合もあればデメリットになる場合もあるでしょう。