質問:
当社では警備ロボットの開発・製造を行っています。当社のロボットはビデオカメラを装備しており、ビルのロビーなどに設置しておくと、来訪者の行動パターン(移動の軌跡)を分析して、怪しい行動を取っている人物がいた場合には、警備員に通報するという機能を備えています。ビデオはロボット内のハードディスクに少なくとの1ヶ月は保存される仕組みになっています。
個人情報保護法が話題になりましたが、このようなロボットを使用することは、個人情報保護法上特に問題はありませんか?
回答:
個人情報保護法では、「個人情報」を「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」と定義しています(法2条1項)。要は、一定の情報から、それがいったい誰に関する情報なのかを特定できるだけのものであれば、この法律上の「個人情報」となります。
個人を撮影したビデオ映像が個人情報に該当するかどうかはこの法文からは直ちにははっきりとしませんが、個人情報保護法に関する経済産業省ガイドラインでは、該当するものとされています。そのため実務上は「個人情報」として扱うことが必要でしょう。
なお個人情報保護法では、保有している個人情報データベースの件数が5000件未満の場合には、個人情報保護法の適用対象外とされています。そしてここでいう「個人情報データベース」とは、個人情報を検索可能なように体系的に構成されたものをいいます。防犯用のカメラのビデオ映像の記録は、それ自体では、特定の個人を検索することができません。そのため記録に含まれている(ビデオに映っている)人間の数は、5000件に達したかどうかを判断するにあたっては、算入する必要がありません。もっとも、他に保有している個人情報データベースの件数が5000件を超えているのであれば、個人情報保護法が適用されますので注意が必要です。
個人情報保護法が適用された場合、個人情報を収集した際には、直ちに個人情報の利用目的を通知又は公表する必要があるとされています。もっとも取得の状況から明かな目的のために個人情報を利用する場合には、例外として、通知又は公表は不要となります。「防犯用カメラの映像」に含まれている個人情報を、「防犯」のために利用するのは、一般的には取得の状況から明かな目的のために利用していると言えるでしょうから、利用目的の通知又は公表は不要でしょう。もっとも多くの場合、プライバシー保護の観点や犯罪抑止の観点から、「防犯カメラ作動中」と表示することはほとんどです。
一方、撮影した内容を、不審者の発見以外の目的に利用する場合(動態調査等)には、張り紙などでこれを掲示しておく必要があります。
なお個人情報が記録されているビデオを第三者に提供することは、法律上は、写っている各個人の同意無しには原則としてできません。また個人情報が記録されている以上は、盗難紛失無きよう安全管理を行う必要があります。今回のロボットの場合には、記録されているハードディスクが内蔵されているとのことですので、これが抜き取られたり、ロボット毎盗難されたりしないよう注意が必要です。
今般の個人情報保護法では、本人から個人情報の保有者に対して、個人情報の開示や、訂正、削除の請求が認められるようになりました。もっともこの請求が認められるのは、保有期間が6ヶ月を超えるものに限られています。そのため、1ヶ月程度で削除してしまうものであれば、これらの請求に応じる必要はありません。
これらの注意点を守っておけば、御質問のロボットを運用することは、個人情報保護法上は特に問題ないでしょう。






