豊臣秀吉が築城した大阪のお城と言えば?

答え:「大阪城」です。

秀吉によって大坂城が築かれ、豊臣氏の居城および豊臣政権の本拠地となりましたが、大坂夏の陣で豊臣氏の滅亡とともに焼失、城跡に現存する櫓や石垣などは徳川氏、江戸幕府によるものであることが分かっています。

豊臣秀吉の壮大な築城計画

天正11年(1583年)、天下統一への道筋を描いていた豊臣秀吉は、石山本願寺の跡地に壮大な城郭の建設を開始しました。この地を選んだ理由は、単なる偶然ではありません。大阪湾に面し、淀川水系の要衝に位置するこの場所は、水陸両方の交通の要所として古くから重要視されてきた土地でした。秀吉は、ここに自らの権威を象徴する「黄金の城」を築き上げることで、全国の大名たちに対して豊臣政権の絶対的な力を誇示しようと考えたのです。

築城工事は実に15年もの歳月をかけて行われ、全国から集められた大名たちが普請を担当しました。特筆すべきは、その規模の壮大さです。本丸だけでも現在の大阪城公園のほぼ全域に相当する広さがあり、総構えと呼ばれる外堀までを含めると、現在の大阪市中央区のほぼ全域を覆うほどの巨大な城郭都市が形成されていました。天守閣は5層7階建てで、その高さは約58メートル。現在復元されている天守閣よりもさらに高く、当時としては驚異的な建造物でした。

「太閤はん」の黄金趣味と城の装飾

豊臣秀吉の大坂城で最も印象的だったのは、その豪華絢爛な装飾でした。天守閣の外壁は黒漆に金箔を施した「黒漆金蒔絵」で覆われ、屋根瓦には金箔が貼られていたため、晴れた日には太陽光を反射して眩いばかりに輝いていたと伝えられています。城内には秀吉自慢の黄金の茶室も設けられており、まさに「黄金の城」の名にふさわしい華麗さでした。

この装飾の豪華さは、単なる権力の誇示だけでなく、秀吉なりの政治的戦略でもありました。農民出身から天下人へと駆け上がった秀吉にとって、伝統的な権威に代わる新しい権威の象徴が必要だったのです。黄金に輝く城は、見る者すべてに豊臣政権の富と力を印象づける効果的な政治装置として機能していました。

大坂の陣と城の運命

慶長19年(1614年)から翌年にかけて起こった大坂冬の陣・夏の陣は、豊臣秀吉が築いた大坂城にとって運命の戦いとなりました。冬の陣では徳川方の攻撃を見事に防いだ大坂城でしたが、和議の条件として外堀と二の丸の破却を余儀なくされ、城の防御力は大幅に削がれてしまいました。

翌年の夏の陣で豊臣氏が滅亡すると、秀吉が心血を注いで築いた壮麗な天守閣も炎に包まれて焼失しました。この時、城内に蓄えられていた金銀財宝も灰燼に帰し、「黄金の城」は文字通り過去の遺物となってしまったのです。興味深いことに、この戦いの混乱の中で多くの金塊が大阪湾に沈んだという伝説も生まれ、現在でも「豊臣の埋蔵金」として語り継がれています。

徳川時代の大坂城再建

豊臣氏滅亡後、徳川幕府は大坂城の重要性を十分に理解していました。西国大名の動向を監視し、大坂という経済的要衝を押さえるため、寛永6年(1629年)から大規模な再建工事に着手しました。しかし、この時建設された城は、豊臣時代のものとは根本的に異なる設計思想で築かれています。

最も大きな違いは、城の基盤となる石垣の高さです。徳川時代の石垣は豊臣時代のものより数メートル高く盛られており、豊臣時代の遺構は完全に地中に埋もれてしまいました。これは単なる建築上の都合ではなく、豊臣氏の記憶を地中に封じ込める政治的意図があったとする研究者も多くいます。現在私たちが目にする大阪城の石垣や櫓、門などは、すべてこの徳川時代の再建によるものなのです。

発掘調査が明かす真実

昭和34年(1959年)から本格的に始まった大阪城跡の発掘調査は、多くの驚くべき発見をもたらしました。地下に眠る豊臣時代の石垣は、徳川時代のものとは全く異なる技術で築かれており、石材も異なることが判明しています。豊臣時代の石垣には、奈良や和歌山から運ばれた良質な石材が使用されており、その精巧な加工技術は当時の最高水準を示しています。

さらに興味深いのは、豊臣時代の城郭の配置が現在とは大きく異なっていたことです。天守閣の位置も現在より西寄りにあったことが確認されており、城全体の構造が徳川時代とは別物であったことが明らかになっています。これらの発見により、豊臣秀吉の大坂城がいかに独創的で壮大な城郭であったかが、現代になってようやく科学的に証明されているのです。

このような歴史の積み重なりこそが、現在の大阪城を特別な存在にしています。地上に見える徳川時代の威厳ある石垣と、地下に眠る豊臣時代の華麗な遺構。二つの時代の権力者の思いが重なり合う場所として、大阪城は今日も多くの人々を魅了し続けているのです。


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