著作権法第39条(時事問題に関する論説の転載等)

趣旨

  • 本条は、新聞や雑誌に掲載された時事問題に関する論説(学術的な性質を有するものを除く)の自由な利用を認めている。
  • 論説は本来著作物として保護されるが、意見形成を目的として書かれる性質上、一定の範囲内での引用や転載を認めることで、情報の流通を促進する趣旨がある。
  • ただし、無制限な利用を認めるものではなく、著作権者の権利を不当に侵害しない範囲での利用に限定される。

解説

対象となる論説

  • 新聞紙または雑誌に掲載され、発行された論説が対象となる。
  • 政治上、経済上、社会上の時事問題に関するものであり、学術的な性質を有するものは除外される。
  • 「時事問題」とは、現在または近接した時点の出来事を指し、過去の出来事でも最近の出来事との関連で取り上げられる場合は含まれる。
  • 「論説」とは、報道機関としての主義主張や提言を展開するものを指し、典型的には社説や巻頭言が該当する。
  • 事実の伝達にすぎない雑報や時事報道は、著作物に該当しないため、本条の対象外である。

自由利用の方法と範囲

  • 他の新聞紙や雑誌への転載、放送、有線放送、または放送対象地域内での同時自動公衆送信が認められる。
  • 「転載」とは、そのまま移し載せることを指し、紙面の都合で要約や一部省略が行われる場合もあるが、全体の要約は許容されない。
  • 転載先は他の新聞紙や雑誌に限定され、書籍などへの転載は対象外である。
  • 翻訳しての転載も認められるが、出所の明示が義務付けられる。
  • 同一性保持権を侵害する変更や切除は許されない。
  • インターネット上でのデータベース蓄積や不特定多数への閲覧提供は認められない。

利用禁止の表示

  • 転載や放送などを禁止する表示がある場合、自由利用の対象とならない。
  • 作者の署名が付された記事も、転載禁止の表示があると解される。
  • 転載禁止の表示は、個々の論説ごとに行う必要がある。

公的伝達の許容

  • 前項に基づいて放送、有線放送、または自動公衆送信された論説は、受信装置を用いて公に伝達することができる。
  • 「公に伝達する行為」とは、受信装置を用いて公衆に直接視聴させる行為を指す。

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