著作権法第40条(政治上の演説等の利用)

趣旨

  • 政治上の演説や裁判手続における公開の陳述について、自由な利用を認めている。これは、民主主義社会において政治的な言論が広く公衆に伝達されることが国民の判断材料を提供し、公正な社会の実現に寄与するためである。
  • また、国や地方公共団体等の機関で行われた公開の演説や陳述についても、報道目的での一定の利用が認められている。これは、国民の知る権利を満たし、参政権の実効性を高めるためである。

解説

1項(政治上の演説等の自由利用)

  • 対象:公開して行われた政治上の演説・陳述、および裁判手続(行政庁の行う審判等を含む)における公開の陳述。
  • 「公開」とは、不特定または多数の者が聴取しうる状態を指す(例:国会の秘密会は対象外)。
  • 政治上の演説・陳述には、国会における内閣総理大臣の所信表明演説などが含まれる。議員の質疑や政府側の答弁などは、2項の対象と解される。
  • 裁判手続における公開の陳述には、弁論、参考人・鑑定人の意見陳述などが含まれる。準備書面の内容も法廷で陳述された場合は対象となる。
  • 制限:同一の著作者の演説等を編集して利用する場合(例:一人の政治家の演説集の出版)は、自由利用の対象外であり、著作権者の許諾が必要。
  • 利用方法:複製、放送、自動公衆送信、翻訳など、方法を問わず利用可能。ただし、出所の明示(48条1項2号)と同一性保持(20条、50条)が求められる。

2項(国・地方公共団体等における演説等の報道利用)

  • 対象:国・地方公共団体の機関、独立行政法人等で行われた公開の演説・陳述(1項の対象を除く)。
  • 条件:報道目的上正当と認められる場合に限る(営利的利用は対象外)。
  • 利用方法
  • 新聞紙・雑誌への掲載、放送、有線放送。
  • 放送を受信して同時に同一地域で受信されることを目的とした自動公衆送信(入力型送信可能化を含む)。
  • インターネット上でのデータベース蓄積等は認められない。
  • 注意点:出所明示が必要。翻訳も認められる(47条の6第1項3号)。同一性保持が求められる。

3項(伝達の自由)

  • 対象:2項により放送、有線放送、または自動公衆送信された演説・陳述。
  • 利用方法:受信装置を用いて公に伝達することができる(例:公共施設での放送の再伝達)。

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