本条の趣旨
- 国立国会図書館の館長は、国立国会図書館法に基づき、国等が提供するインターネット資料及び私人が提供するオンライン資料に係る著作物を、著作権者の許諾なく記録媒体に記録することを認められている。
- これにより、各資料の包括的かつ網羅的な収集が可能となる。
- 従来の個別交渉方式では、インターネット上の膨大で消失しやすい情報を収集し保存することが困難であったため、この規定が設けられた。
1項の解説
- 国立国会図書館の館長は、インターネット資料又はオンライン資料を収集するために必要と認められる限度において、当該資料に係る著作物を図書館の使用に係る記録媒体に記録することができる。
- 実際の記録作業は職員が行うが、館長の指示の下で行われるため、本条の適用がある。
- 外部業者への委託も、館長の管理支配が及ぶ限り適用が認められる。
インターネット資料
- 国立国会図書館法第25条の3第1項に定義される。
- 国、地方公共団体、独立行政法人等が公衆に利用可能とした電子的な文字、映像、音、プログラム等を指す。
オンライン資料
- 国立国会図書館法第25条の4第1項に定義される。
- 私人がインターネット等を通じて公衆に利用可能とした電子的な文字、映像、音、プログラム等であり、図書又は逐次刊行物に相当するものとして館長が定めるものを指す。
- 機密扱いのものや簡易なものは除外される。
必要と認められる限度
- インターネット資料の記録は、「公用に供するため」の収集に必要な限度で認められる。
- オンライン資料の記録は、「文化財の蓄積及びその利用に資するため」の収集に必要な限度で認められる。
記録の方法
- インターネット資料の収集は、クローラ(収集ロボット)を用いた自動収集が中心である。
- オンライン資料の収集は、自動収集、ファイルアップロード、郵送による媒体提出の方法がある。
2項の解説
- 国、地方公共団体等の諸機関は、館長の求めに応じてインターネット資料を提供するために必要と認められる限度において、当該資料に係る著作物を複製することができる。
- 私人は、オンライン資料を提供するために必要と認められる限度において、当該資料に係る著作物を複製することができる。
- これらの複製は、国立国会図書館への提供が義務付けられていることを前提とする。
- 提供義務を免除されている場合に複製を行えば、著作権侵害となる可能性がある。
複製物の取扱い
- 複製した記録媒体を国立国会図書館に送付したり、メールで送信したりする行為は、頒布先が国立国会図書館に限定されているため、頒布権や公衆送信権の侵害とはならないと解される。
著作隣接権への準用
- 本条の規定は、実演、レコード、放送、有線放送の利用について、著作隣接権にも準用されている。
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