趣旨
- プログラムの著作物の複製物の所有者は、自ら当該著作物をコンピュータで実行するために必要な限度において、複製を行うことができる。
- この規定は、プログラムの継続的な利用を確保するための煩雑な許諾手続を省略し、著作権者の経済的利益との均衡を図ることを目的とする。
- プログラムの複製物の所有権を滅失以外の事由で失った場合、他の複製物を保存することは原則として禁止される。
対象となるプログラム
- 本規定が適用されるのは「プログラムの著作物」である。
- 「プログラム」には、狭義のプログラムコードだけでなく、その実行に必要なデータ部分も含まれる。
- プログラムと一体として利用される付属データについても、類推適用が認められる場合がある。
複製が認められる主体
- 複製が認められるのは、プログラムの複製物の「所有者」に限られる。
- 所有権の取得方法は問わず、適法・不法を問わず複製物を所有する者を含む。
- リースやレンタルによる利用者は「所有者」に含まれないが、著作権者との契約により黙示の許諾が認められる場合がある。
複製の目的と範囲
- 複製は、所有者が「自ら」プログラムをコンピュータで実行するために必要と認められる限度において認められる。
- 法人の場合、従業員が業務で利用する行為は「自ら」実行するものとみなされる。
- 必要な複製の例として、ハードディスクへのインストール、バックアップコピーの作成、使用環境に合わせた修正などが挙げられる。
- 複数のコンピュータへのインストールについて明文の制限はないが、実行主体が所有者に限られる点が重要である。
複製の方法と制限
- 複製は、機械的なコピーに限らず、手動入力による場合も含まれる。
- 複製先の記録媒体が所有者の所有物であることが原則として求められるが、所有権移転が予定される媒体への複製は認められる。
- 第三者を手足として複製作業を行うことは許容される。
複製物の保存禁止
- プログラムの複製物の所有権を、滅失以外の事由(譲渡など)で失った場合、他の複製物を保存してはならない。
- 保存の禁止は、所有権を失った複製物以外のすべての複製物に適用される。
- 複製物の保存状態を解消するため、記録媒体からのデータ消去で足りる。
- 著作権者が別段の意思表示をした場合、保存禁止の規定は適用されない。
違法複製物に関する例外
- 複製元のプログラムが著作権侵害により作成された複製物であり、所有者がその事情を知りながら業務上使用する目的で複製した場合、本規定による複製は認められない。
規定の性質
- 本規定は、プログラムの購入者がそのプログラムを自ら実行するために必要な複製を認めるものであり、強い合理性を有する。
- 契約による本規定の適用排除は、明確な合意がない限り認められず、特にインストールを禁止する条項は無効とされる可能性が高い。
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