権利制限の概要
- 美術の著作物または写真の著作物の原作品を適法に公に展示する者(原作品展示者)は、観覧者のための解説・紹介を目的として、一定の条件下で展示著作物を複製・上映・自動公衆送信できる。
- これらの行為は、著作権者の利益を不当に害する場合には認められない。
適用対象
対象となる著作物
- 美術の著作物(形状や色彩による美的鑑賞の対象となるもの)
- 写真の著作物(発行済みのものも含む)
対象となる主体
- 原作品展示者:美術・写真著作物の原作品により、展示権を侵害することなく公に展示する者
- 原作品とは、著作者の思想感情が第一義的に表現されている有体物を指す
- 展示予定が決まっている者も含まれる
認められる行為
小冊子への掲載(第1項)
- 観覧者のための解説・紹介を目的とする小冊子に展示著作物を掲載できる
- 小冊子は小型の薄い書籍を指し、観賞用の豪華本や画集は含まれない
- 解説・紹介が主目的であり、複製物の鑑賞を主目的とするものは対象外
- 観覧予定人数を大幅に超える部数の作成は認められない
上映・自動公衆送信のための複製(第1項)
- 第2項に基づく上映・自動公衆送信のために必要な限度で複製できる
- 解説が主体であるか、資料的要素が多いことが必要
上映・自動公衆送信(第2項)
- 観覧者のための解説・紹介を目的とする場合、必要と認められる限度で上映・自動公衆送信できる
- 上映:スクリーン、テレビモニター、携帯端末などへの映写
- 自動公衆送信:館外サーバーから携帯端末への送信など
- 単なる画像表示ではなく、解説・紹介との関連性が必要
所在情報提供のための複製・公衆送信(第3項)
- 展示著作物の所在情報を公衆に提供するために必要と認められる限度で複製・公衆送信できる
- チラシ、ポスター、ウェブサイトなどでの使用が可能
- サムネイル画像に限られないが、単なる高品質画像の提供は含まれない
- 原作品展示者に加え、文化庁長官が指定する情報集約事業者も対象
制限事項
著作権者利益の保護
- 展示著作物の種類・用途、複製の部数・態様、上映・公衆送信の態様を考慮し、著作権者の利益を不当に害する場合は適用除外
- 観賞用書籍として市場価値があるものとの競合を生じさせる行為は認められない
- 観覧終了後も継続使用できる高品質データの提供などが該当
実施上の注意点
- 実際の編集・印刷・製本作業を専門業者に委託しても、原作品展示者が主体として責任を負う
- 小冊子の頒布は展示期間中に限られ、残余の頒布は認められない
- 色彩修正や部分抜粋など、解説・紹介に必要な範囲での変更は許容される
- 館内限定の利用が原則であり、一般向けの配布・送信は対象外
コメントを残す