著作権法第36条(試験問題としての複製等)

条文の概要

  • 公表された著作物について、入学試験その他人の学識技能に関する試験又は検定の目的上必要な限度で複製・公衆送信が可能
  • 営利目的の場合は著作権者への補償金支払いが必要
  • 公衆送信の場合は著作権者の利益を不当に害する場合を除く

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権利制限の理由

  • 試験問題の事前許諾取得は秘密性の観点から事実上不可能
  • 試験問題としての利用は著作権者が通常想定しない利用形態
  • 著作権者の利益を不当に害さない社会慣行として確立

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対象となる著作物

  • 公表された著作物に限定(非公表の遺稿、日記、私信は対象外)
  • 著作物の種類に制限なし(小説、音楽、美術、写真、地図、映画等すべて可能)

対象となる試験・検定

  • 入学試験、卒業試験、資格試験、公務員試験、運転免許試験等
  • 企業の入社試験、模擬テスト、定期考査等も含む
  • 学力達成度評価試験は教育機関における複製(35条)に該当する場合もある

参考:

複製の範囲と限度

  • 試験目的上客観的に必要と認められる限度に限定
  • 著作物全体の複製も、試験として必要な場合は可能
  • 複製部数は受験者数に採点者控用や予備分を加えた必要部数まで

公衆送信の特別要件

  • インターネット等による試験問題配信が対象
  • 放送・有線放送は除外
  • 著作物の種類・用途・送信態様により著作権者の利益を不当に害する場合は不可
  • 不特定多数が容易に閲覧可能な形態での送信は原則として認められない

営利目的の場合の補償金制度

  • 営利目的で複製・公衆送信を行う者が支払義務者
  • 試験実施者ではなく、複製・送信行為者が対象
  • 通常の使用料相当額の補償金を著作権者に支払い
  • 試験問題作成業者や受験料徴収業者等が該当

著作者人格権との関係

  • 試験問題作成に必要な限度での変更(空欄化、一部改変)は可能
  • やむを得ない改変として同一性保持権侵害にならない場合が多い
  • 著作者名・作品名の出所明示が原則として必要
  • 旧字・旧仮名の新字・新仮名への変更は基本的に許容

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適用除外事例

  • 過去問題集や参考書への再録
  • 試験終了後の新聞報道(時事報道として別途検討)
  • 模擬問題集としての市販利用
  • 試験後の解説での利用(引用の可能性はある)

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