条文の概要
- 著作物を公衆に提供・提示する者は、著作者の死後も著作者人格権の侵害に該当する行為を禁止
- ただし、著作者の意を害しないと認められる場合は例外
制度の趣旨
- 著作者人格権は著作者の死亡により消滅するが、ベルヌ条約の規定により設けられた制度
- 著作者の生前の人格的利益保護を十全にするため、生者の信頼感という社会的法益を保護
- 著作者死後は同意を得る方法がないため、文化発展を阻害しないよう例外規定を設置
参考:
- 真贋と著作者人格権雑考(志賀典之) (学術)
- JRRCマガジンNo.349 フランス著作権法解説5 著作者人格権 (公的機関)
適用対象と範囲
保護対象となる著作物
- 現行著作権法により保護される著作物が対象
- 旧著作権法施行前に著作権が消滅した著作物は適用外
参考:
- 著作権法入門 2024-2025 (公的機関)
- 著作権関係法令・条約集(令和6年版) (公的機関)
適用条件
- 著作者が死亡または法人が解散した後
- 著作物を公衆に提供・提示する場合に限定
- 共同著作物では、一人でも死亡すれば当該著作者との関係で適用
禁止される行為
- 公表権、氏名表示権、同一性保持権の侵害行為
- 著作者の名誉・声望を害する方法による著作物利用
- 侵害物品の輸入・頒布・所持等の行為
- 著作権保護期間経過後も禁止継続
参考:
- 文化審議会著作権分科会(第66回)議事録 (政府)
例外規定(ただし書)
参考:
適用要件
- 当該著作者の意を害しないと客観的に認められる場合
- 著作者の生前の人格権行使態様から判断して許容範囲内の行為
参考:
- JRRCマガジンNo.382 最新著作権裁判例解説22 (公的機関)
- 文化審議会 著作権分科会 法制問題小委員会(第4回)議事録[資料1-2]別紙 (政府)
- 弁護士法人ITJ法律事務所 裁判例集 (専門家)
判断要素
- 行為の性質:侵害行為の態様や意図
- 行為の程度:変更を加えた程度
- 社会的事情の変動:仮名遣い変更、使用可能漢字の変更、コンピュータ発達、秘密性喪失、社会的タブーの変化
- その他の事情:著作者の生前の明示的意思表示、公表を拒んだ理由の有無等
参考:
- 第5回 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会議事録 (政府)
- 平成21年第7回 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会議事録 (政府)
- 平成22年第8回 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会議事録 (政府)
法的効果
- 遺族による差止請求・名誉回復措置請求が可能
- 500万円以下の罰金(刑事罰)
- 損害賠償請求は認められない
- 非親告罪として処罰対象
参考:
- 文化審議会 著作権分科会 法制問題小委員会(第2回)議事録・配付資料 [資料5] (政府)
- 文化審議会 著作権分科会 法制問題小委員会(第10回)議事録・配付資料 [資料3] 第2節(2)親告罪の範囲の見直しについて (政府)
- 文化審議会 著作権分科会 法制問題小委員会(第5回)議事録・配付資料 [資料3] (政府)
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