著作権法第64条(共同著作物の著作者人格権の行使)

基本原則

参考:

全員合意の必要性

  • 共同著作物の著作者人格権は、著作者全員の合意がなければ行使できない
  • 1つの著作物に複数人の思想・感情が投影されているため、各人の人格的評価に密接に関連する
  • 公表時期、著作者名の表示方法、著作物の内容変更などは全員の同意が必要

合意拒否の制限

  • 共同著作者は信義に反して合意の成立を妨げることはできない
  • 単に合理的理由がないだけでは不十分で、より厳格な基準が適用される
  • 嫌がらせや個人的感情、自分の利益のための条件提示などは信義違反に該当

著作者人格権の内容と範囲

対象となる権利

  • 公表権、氏名表示権、同一性保持権が対象
  • 著作物の修正増減請求権や出版物の廃絶請求権も本条の適用対象となる
  • 名誉・声望を害する利用を防ぐ権利は本条の「行使」に含まれない

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権利行使の具体例

  • 未公表作品の発表時期決定
  • 著作者名の表示変更
  • 共同著作者間の氏名表示順序の入れ替え
  • 特定の共同著作者の氏名削除や追加
  • 著作物の内容変更

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権利行使に含まれないもの

  • 第三者による著作者人格権侵害に対する差止請求
  • 慰謝料請求や刑事告訴
  • これらは共同著作者の1人が単独で実施可能

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代表者制度

代表者の選任

  • 手続きの煩雑さを避けるため、共同著作者の中から代表者を選任できる
  • 選任には著作者全員の合意が必要
  • 書面などの特定の様式は不要で、黙示的な合意も有効

代表者の権限

  • 他の共同著作者との個別合意なしに著作者人格権を行使可能
  • 複数の代表者を選任することも可能
  • 侵害に対する訴訟提起は代表権の範囲外

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代表権の制限と第三者保護

  • 共同著作者は代表者の代表権に制限を設けることができる
  • ただし、その制限は善意の第三者に対抗できない
  • 善意の第三者は代表者の権限を信頼して行動した者を指す

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特殊な状況への対応

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共同著作者の死亡

  • 死亡した著作者の遺族は「著作者」に含まれない
  • 残りの共同著作者のみの合意で著作者人格権の行使が可能
  • ただし、遺族は死亡した著作者の人格権侵害に対して差止請求や名誉回復措置を求められる

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信義違反への法的対応

  • 信義に反して合意を拒む共同著作者に対し、意思表示を命ずる判決を求められる
  • 手続きを経ずに権利行使した場合でも、侵害の責任は免れない
  • 慰謝料額や差止めの判断で信義違反の事実が考慮される場合がある

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代表者の地位終了

  • 代表者の死亡・解散により地位は終了し、相続されない
  • 成年被後見人や被保佐人となった場合も地位は終了
  • 解任や辞任は可能で、解任には全員の合意は不要

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