皆さん、こんにちは。今回は著作権シリーズの第2回として、「どんなものが著作物として保護されるのか」について、わかりやすくお話ししていきますね。
そもそも著作物って何?
まず基本的なところから始めましょう。著作物というのは、簡単に言うと「人の心や考えを創造的に表したもので、文化的な価値があるもの」のことです。
法律的には、次の4つの要件をすべて満たしたものが著作物とされています:
- 人間の思考や感情が込められている
- 創造性がある
- 具体的な形で表現されている
- 文化的な分野に属している
これだけだとちょっと硬い感じがしますが、実際にはとても身近なものばかりなんですよ。
人間の心が生み出したもの
まず大切なのは、「人間の思考や感情」が表れていることです。これは当然のことのように思えますが、実はとても重要なポイントなんです。
例えば、単純な事実の記録、たとえば「今日の気温は25度でした」といった情報は、人の感情や考えが込められていないので著作物にはなりません。また、最近話題になることが多いAIが自動生成した文章や画像も、人間の思考や感情が直接反映されていないため、現在の法律では著作物として認められていません。
面白いのは、動物が偶然作り出したものも著作物にはならないということです。例えば、象が鼻で描いた絵や、サルがカメラのシャッターを押して撮影した写真などは、技術的にはすごいかもしれませんが、著作物としては保護されないんです。
創造性って何?
次に重要なのが「創造性」です。でも、これは「天才的なアイデア」や「革新的な技術」を意味するわけではありません。法律上の創造性というのは、もっとハードルが低くて、「その人らしさが少しでも表れている」程度で十分なんです。
つまり、小さなお子さんが描いた絵や、中学生が書いた詩でも、その子なりの個性や工夫が感じられれば、立派な著作物として保護されます。プロの作品でなくても、アマチュアの作品でも関係ありません。
一方で、他の人の作品を完全にまねして作ったものは、どんなに技術的に優れていても著作物にはなりません。例えば、有名な絵画の精密な模写は、絵の技術としては素晴らしくても、模写した人の個性が表れていないので、新しい著作物とは認められないんです。
また、誰が作っても同じようになってしまうような「ありふれた表現」も創造性があるとは言えません。例えば、「おめでとうございます」といった一般的な挨拶や、電話帳の名前と電話番号の羅列なども、創作性が認められません。
具体的な形になっていること
3つ目の要件は「具体的な形で表現されている」ことです。これは、頭の中にあるアイデアや構想だけでは著作物にならない、ということを意味しています。
例えば、「宇宙を舞台にした壮大な恋愛小説を書こう」というアイデアがあったとしても、それを実際に文章にして表現するまでは著作物になりません。また、「新しいダンスの振り付けを考えた」と思っても、実際にその動きを踊って見せたり、図や文字で記録したりして、他の人にも伝わる形にしなければ著作物として保護されないんです。
面白いことに、この「表現」は文字や絵だけでなく、音楽、ダンス、建物など、様々な形が認められています。目に見えないものでも、音楽のように耳で聞けるものや、ダンスのように体の動きで表現されるものも含まれます。
文化的な分野って?
最後の要件は「文化的な分野に属する」ことです。これは、人々の精神的な豊かさや文化の発展に寄与するような分野のことを指しています。
具体的には、以下のような分野が含まれます:
文学の分野
- 小説、エッセイ、詩、俳句
- 新聞や雑誌の記事
- 学術論文、レポート
- 手紙、日記(公開されているもの)
- 講演の内容
音楽の分野
- 楽曲(メロディー)
- 歌詞
- 楽曲と歌詞が一体となった楽曲
舞踊・演劇の分野
- バレエ、日本舞踊、現代ダンスの振り付け
- 演劇の台本
- マイムやパントマイムの動き
美術の分野
- 絵画、彫刻、版画
- 漫画、イラスト、キャラクターデザイン
- 書道作品
- 舞台美術、セットデザイン
- 工芸品(美術的価値があるもの)
建築の分野
- 住宅、商業建築、公共建築(芸術的な価値があるもの)
- 庭園設計
- インテリアデザイン(創作性があるもの)
図形・地図の分野
- 学術的な図表、グラフ
- 地図(独自の工夫があるもの)
- 技術図面、設計図
- 立体模型
映像の分野
- 映画、ドラマ、アニメーション
- ドキュメンタリー
- CM、プロモーションビデオ
- ゲームソフト(映像部分)
- YouTubeなどの動画コンテンツ
写真の分野
- 芸術写真、報道写真
- 商業写真、ポートレート
- スマートフォンで撮影した写真(創作性があるもの)
プログラムの分野
- コンピューターソフトウェア
- スマートフォンアプリ
- ゲームプログラム
- ウェブサイトのプログラム
特別な種類の著作物
基本的な著作物以外にも、特別な種類の著作物があります。
二次的著作物
これは、既存の著作物を基にして新たに創作されたもののことです。例えば:
- 外国の小説を日本語に翻訳したもの
- ピアノ曲をオーケストラ用に編曲したもの
- 小説を映画化したもの
- 漫画をアニメ化したもの
注意が必要なのは、二次的著作物を利用する場合、元の著作物の作者と二次的著作物の作者、両方の許可が必要だということです。
編集著作物
複数の素材を集めて、その選び方や並べ方に創造性があるもののことです。例えば:
- 百科事典、辞書
- 詩集、短編集
- 新聞、雑誌
- 写真集、画集
- 音楽のコンピレーションアルバム
ただし、単に情報を羅列しただけのものは編集著作物になりません。どの情報を選んで、どんな順番で並べるかに工夫や個性がある必要があります。
データベース著作物
編集著作物の一種で、コンピューターで検索できるように体系的に整理されたもののことです。例えば:
- オンライン辞書、百科事典
- 音楽配信サービスの楽曲データベース
- 不動産情報サイト
- レシピサイト(データベース部分)
著作物にならないもの
一方で、創作性があっても著作物として保護されないものもあります。
短すぎるもの
一般的に、標語やキャッチフレーズ、題名などは短すぎて創作性が認められにくいとされています。ただし、内容によっては保護される場合もあります。
例えば:
- 「早起きは三文の徳」(ことわざ)→ 著作物ではない
- 「そうだ 京都、行こう。」(JRのキャッチフレーズ)→ 著作物かどうか微妙
- 長編小説のタイトル → 通常は著作物ではない
公的な文書
国や地方自治体が作成した公的な文書は、たとえ創作性があっても著作物として保護されません。これは、国民が自由に利用できるようにするためです。
具体的には:
- 法律、政令、条例
- 政府の白書、報告書
- 裁判所の判決文
- 国会の議事録
- 地方議会の議事録
ただし、これらの翻訳や編集物で、民間が作成したものは著作物になる場合があります。
伝承されてきたもの
民話、伝説、昔話などは、特定の作者が不明で、長い間多くの人によって語り継がれてきたものなので、新たに著作権が発生することはありません。
ただし、これらを基にして新しい物語を創作した場合は、その新しい部分について著作権が発生します。例えば、昔話の「桃太郎」を現代風にアレンジして新しい小説を書いた場合、その新しい小説部分は著作物として保護されます。
共同で作った著作物
複数の人が協力して一つの著作物を作った場合はどうなるのでしょうか?
共同著作物
2人以上の人が協力して作った著作物で、それぞれの人が作った部分を分離できないもののことを「共同著作物」と言います。
例えば:
- 作詞家と作曲家が協力して作った楽曲
- 複数の漫画家が協力して描いた漫画
- 研究者が共同で執筆した学術論文
この場合、著作権は共同著作者全員の共有となり、利用する際は全員の合意が必要になります。
結合著作物
それぞれの人が作った部分を分離できるもので、全体として一つの著作物を構成しているものです。
例えば:
- 歌詞(作詞家)と楽曲(作曲家)
- 小説(原作者)と挿絵(イラストレーター)
- 脚本(脚本家)と音楽(作曲家)
この場合、それぞれの部分について個別に著作権が存在します。
実際の判断は難しい
ここまで説明してきましたが、実際に何が著作物かを判断するのは、専門家でも難しい場合があります。特に境界線上のケースでは、裁判で争われることもあります。
例えば:
- SNSの短い投稿文
- 料理のレシピ
- ゲームのルール
- ビジネスモデル
- ファッションデザイン
これらは、内容や表現方法によって著作物になったりならなかったりします。
まとめ
今回は、どんなものが著作物として保護されるのかについて詳しく見てきました。
重要なポイントをまとめると:
- 人間の思考や感情が表れていること
- 少しでも創造性があること
- 具体的な形で表現されていること
- 文化的な分野に属していること
これらすべてを満たしたものが著作物として保護されます。
私たちの身の回りには、たくさんの著作物があふれています。SNSに投稿する写真、ブログに書く文章、友人に送るメッセージまで、意外と多くのものが著作物になり得るんです。
次回は、著作者にはどんな権利があるのかについて詳しくお話しします。自分が作った作品を守るため、そして他人の作品を適切に利用するために、どんな権利があるのかを理解していきましょう。
著作権は決して遠い世界の話ではありません。私たち一人一人が創作者であり、同時に利用者でもある時代だからこそ、正しい知識を身につけることが大切ですね。
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