Thaler v Comptroller-General of Patents, Designs and Trade Marks
Case Metadata
Basic Information
1. Case Name: Thaler (Appellant) v Comptroller-General of Patents, Designs and Trade Marks (Respondent)
2. Court: Supreme Court of the United Kingdom, London
3. Filing Date: October 20, 2018 (initial patent applications filed with UKIPO)
4. Judgment Date: December 20, 2023
5. Case Number: [2023] UKSC 49; UKSC 2021/0201
6. Current Status: Final judgment rendered; appeal dismissed
Parties
7. Plaintiff(s): Dr. Stephen Thaler (Individual inventor and AI researcher; owner and developer of the DABUS AI system)
8. Defendant(s): Comptroller-General of Patents, Designs and Trade Marks (UK Intellectual Property Office official responsible for patent administration)
9. Key Law Firms:
– For Appellant: Williams Powell (solicitors)
– For Respondent: Treasury Solicitor
10. Expert Witnesses: Not specifically identified in available public records; technical aspects of DABUS system presented through Dr. Thaler’s submissions
Legal Framework
11. Case Type: Patent law – AI inventorship dispute; Administrative law challenge to patent office decision
12. Primary Legal Claims:
– Interpretation of “inventor” under Patents Act 1977, Section 7
– Whether AI systems can be named as inventors on patent applications
– Entitlement to patent rights derived from AI-generated inventions
13. Secondary Claims:
– Ownership rights in AI-generated inventions based on machine ownership
– Procedural requirements under Section 13(2) of Patents Act 1977
– Compliance with Patent Rules 2007, Rule 10
14. Monetary Relief: No monetary damages sought; declaratory relief regarding patent application status
Technical Elements
15. AI/Technology Involved:
– DABUS (Device for the Autonomous Bootstrapping of Unified Sentience) – AI neural network system
– Two inventions: Food container with fractal geometry for improved grip and heat transfer; Warning light beacon with unique flashing pattern for enhanced attention capture
16. Industry Sectors:
– Artificial Intelligence and Machine Learning
– Patent Law and Intellectual Property
– Consumer Products Manufacturing
– Safety Equipment Design
17. Data Types:
– AI training data and neural network configurations
– Technical invention specifications
– Patent application documentation
Database Navigation
18. Keywords/Tags: AI inventorship, DABUS, patent law, artificial intelligence, machine inventor, UK Supreme Court, Patents Act 1977, autonomous invention, neural networks, Dr. Stephen Thaler, IP rights, non-human inventors
19. Related Cases:
– Thaler v Commissioner of Patents (Federal Court of Australia) [2021] FCA 879
– Thaler v Vidal (United States Court of Appeals for the Federal Circuit) No. 2021-2347 (2022)
– EPO Board of Appeal decisions J 8/20 and J 9/20 (European Patent Office)
– Thaler v Registrar of Patents (South Africa) 2021 BIP 306
詳細分析 (Detailed Analysis)
事件の概要 (Case Overview)
背景と争点 (Background and Issues)
事実関係:
2018年10月、スティーブン・ターラー博士は英国知的財産庁(UKIPO)に2件の特許出願を行った。第一の出願は新規な食品容器に関するもので、第二の出願は新規な点滅光に関するものであった。ターラー博士によれば、これらの発明は両方とも彼のAIマシン「DABUS」(Device for the Autonomous Bootstrapping of Unified Sentience)によって自律的に創造されたものであった。
ターラー博士は、AI発明者性の問題を試すため、意図的に自身を発明者として指名することを控え、DABUSが発明を自律的に生成したと主張した。同時に、DABUSの所有者として、特許を出願し所有する権利を有すると主張した。
中心的争点:
1. 1977年特許法における「発明者」の定義がAIシステムを含むか否か
2. AIシステムが法的に「発明を考案する」ことができるか
3. AIシステムの所有者が、そのシステムによって生成された発明に対する権利を有するか
4. 特許出願において非人間を発明者として指名することの法的妥当性
原告の主張:
– DABUSは発明を自律的に生成する能力を有する高度なAIシステムである
– 「発明者」の定義は自然人に限定されるべきではない
– DABUSの所有者として、その生成物に対する権利を有する
– 技術の進歩に合わせて法律の解釈も進化すべきである
– AIによる発明を特許で保護できないことは、イノベーションを阻害する
被告の主張:
– 1977年特許法は明確に自然人のみを発明者として想定している
– 法律の文言と立法趣旨から、機械は発明者になり得ない
– 所有権の原則は、機械による創造物への権利を自動的に付与しない
– 現行法の変更は立法府の役割であり、司法の役割ではない
AI/技術要素:
DABUSは、スティーブン・ターラー博士によって開発された、接続主義型AIシステムである。このシステムは、ニューラルネットワークアーキテクチャを使用し、複雑な概念を形成し、それらを組み合わせて新しいアイデアを生成する能力を持つとされる。具体的には:
– フラクタル幾何学を利用した食品容器(熱伝達とグリップ性能の向上)
– 注意を引きやすい独特な点滅パターンを持つ警告灯
手続きの経過 (Procedural History)
重要な手続き上の決定:
– 2019年12月4日:英国知的財産庁の聴聞官が、DABUSは発明者として認められず、ターラー博士も単にDABUSを所有していることを理由に特許を出願する権利を有しないと決定
– 2020年9月21日:高等法院がUKIPOの決定を支持
– 2021年9月21日:控訴院が多数意見により控訴を棄却(Arnold判事とLaing判事が多数意見、Birss判事が反対意見)
– 2023年12月20日:最高裁判所が全員一致で控訴を棄却
証拠開示:
特許出願書類、DABUSシステムの技術仕様、発明の詳細な説明が提出された。しかし、DABUSが実際に自律的に発明を生成したかどうかの技術的証明は、法的問題の解決のために必要とされなかった。
専門家証言:
公開記録には特定の専門家証人の詳細は含まれていないが、DABUSシステムの能力と動作に関する技術的説明はターラー博士自身から提供された。
判決の概要 (Judgment Summary)
裁判所の判断 (Court’s Decision)
主要な判決内容:
最高裁判所は、キッチン卿(Lord Kitchin)による主導的判決において、以下の主要な判断を示した:
1. 「発明者」の定義について
– 1977年特許法第7条および第13条の法文解釈により、「発明者」は自然人でなければならない
– 法律の文言、構造、立法趣旨すべてが、発明者が自然人であることを前提としている
– 「発明を考案する」という行為は、人間の精神的活動を必要とする
2. DABUSの発明者としての地位
– DABUSは発明者ではなく、発明者になることもできない
– 機械が技術的装置を生成したとしても、それは法的意味での「発明の考案」ではない
– 自律的に動作したとしても、この結論は変わらない
3. 所有権に基づく権利主張
– 発明者が存在しない以上、譲渡可能な財産権も存在しない
– DABUSの所有権は、その生成物に対する特許権を自動的に付与しない
– 英国法における「発明者からの権利承継」の原則は、機械には適用されない
勝敗の結果:
英国知的財産庁(被告)が完全勝訴。ターラー博士の控訴は全員一致で棄却された。
命令された救済措置:
– 特許出願は1977年特許法第13条(2)の要件を満たさないため、取り下げられたものとみなされる
– 追加的な救済措置や損害賠償は命じられていない
重要な法的判断:
– 現行法下では、AIシステムは特許の発明者として指名できない
– 法律の変更は立法府の役割であり、司法による拡大解釈は適切でない
– AIを「高度に洗練されたツール」として使用した人間は発明者となり得る
反対意見・補足意見:
最高裁判所では全員一致の判決であったが、控訴院段階ではBirss判事が反対意見を述べていた。Birss判事は、DABUSを発明者として指名することは第13条(2)(a)の要件を満たすとの見解を示していた。
法的推論の分析 (Analysis of Legal Reasoning)
適用された法理:
– 制定法解釈の原則(文言主義的アプローチ)
– 立法趣旨の考慮
– 国際条約(特にパリ条約)との整合性
– 財産権法の基本原則
事実認定:
– DABUSが実際に発明を「生成」したかどうかは、法的分析のために仮定として受け入れられた
– ターラー博士がDABUSの所有者であることは争いがない
– ターラー博士自身は発明者であると主張していない
技術的理解:
裁判所は、AIシステムの高度な能力を認識しつつも、現行法の枠組み内での解釈に焦点を当てた。キッチン卿は、AIが「高度に洗練されたツール」として使用される場合と、完全に自律的に動作する場合を区別し、前者の場合は人間が発明者となり得ることを示唆した。
法的意義 (Legal Significance)
先例価値 (Precedential Value)
将来への影響:
この判決は、英国におけるAI発明者性に関する決定的な先例となった。以下の点で将来の訴訟に影響を与える:
1. AIシステムは、どれほど高度であっても、現行法下では発明者として認められない
2. AI所有権は、AI生成物に対する特許権を自動的に付与しない
3. AIを使用した発明において、人間の貢献が発明者性の鍵となる
法理論の発展:
– 「発明の考案」には人間の精神的活動が必要という原則の確立
– 財産権法と知的財産権法の交差点における新たな課題の提示
– AI時代における発明者性概念の再検討の必要性を示唆
解釈の明確化:
– 1977年特許法における「発明者」の定義の明確化
– 「発明を考案する」行為の法的意味の確定
– 特許出願における発明者指定要件の厳格な適用
規制・実務への影響 (Regulatory and Practical Impact)
AIガバナンス:
企業は以下の対応が必要となる:
– AI開発プロジェクトにおける人間の貢献の明確な文書化
– AIシステムの使用における人間の監督と意思決定の記録
– 発明プロセスにおける人間とAIの役割分担の明確化
コンプライアンス:
– 特許出願時に必ず自然人を発明者として指定
– AIを使用した発明では、人間の貢献を強調
– 内部文書において、発明プロセスにおける人間の関与を記録
業界への影響:
– AI開発企業は、特許戦略の見直しが必要
– 研究開発における人間研究者の役割の再評価
– AIシステムの「ツール」としての位置付けの強化
リスク管理:
– AI生成物の知的財産権保護戦略の再構築
– 営業秘密による保護の検討
– 国際的な特許出願戦略の調整
比較法的観点 (Comparative Law Perspective)
日本法との比較:
日本の特許法も発明者は自然人であることを前提としており、この点で英国法と一致している。しかし、日本では:
– AIを「道具」として使用した場合の発明者認定基準がより柔軟である可能性
– 職務発明制度により、企業による特許取得が容易
– AI生成物の著作権については、別途議論が進行中
他国判例との関係:
– 米国:連邦巡回控訴裁判所も同様にAI発明者性を否定(Thaler v. Vidal)
– EU:欧州特許庁も自然人のみが発明者となり得ると判断
– オーストラリア:一時的にAI発明者性を認めたが、控訴審で覆された
– 南アフリカ:AI発明者を認める特許を付与(実体審査なし)
グローバルな影響:
– 国際的なハーモナイゼーションの必要性
– WIPOにおける議論の活発化
– 多国籍企業の特許戦略への影響
重要なポイント (Key Takeaways)
実務家への示唆:
1. 特許出願戦略
– AIを使用した発明では、必ず人間の発明者を特定する
– 発明プロセスにおける人間の貢献を詳細に文書化する
– AIは「高度なツール」として位置付ける
2. 契約実務
– AI開発・利用契約において、知的財産権の帰属を明確化
– 発明者の特定方法について事前に合意
– AIシステムのライセンス条件の慎重な検討
3. リスク管理
– AI生成物の保護方法の多様化(営業秘密、著作権等)
– 国際出願における各国法の相違への対応
– 立法動向の継続的モニタリング
今後の展望:
1. 立法的対応の可能性
– 英国政府によるAI法制の検討
– 国際条約レベルでの調整の可能性
– 産業界からの立法要求の増加
2. 技術的発展との関係
– より高度なAIシステムの出現による法的課題の複雑化
– 人間-AI協働モデルの発展
– 発明プロセスの透明性確保技術の重要性
3. 国際的動向
– 各国の立法・司法判断の収斂または分岐
– 技術移転と国際競争力への影響
– 新たな国際的枠組みの必要性
注意すべき事項:
1. 実務上の留意点
– AIを「発明者」として記載しないこと
– 人間の貢献が最小限の場合のリスク
– 複数の法域における異なる取扱いへの対応
2. 戦略的考慮事項
– オープンイノベーションvs.クローズド戦略の選択
– 特許以外の知的財産権による保護の検討
– AI開発における人材配置の重要性
3. 将来的なリスク
– 法改正による既存戦略の陳腐化
– 国際的な規制の分断化
– 技術進歩に法制度が追いつかないリスク
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