契約の成立・約款論:返品要求は拒否できるか

当方プリペイドカードの販売を行っています。偽造カードによる詐欺が多発しているため、発行元より、「返品は約款上いたしかねます。返品をご希望の際には発行元にご連絡ください」と告知するように指導がありました。このような告知は有効なのでしょうか。また返品の要求を拒むことは可能でしょうか。

定型的に行われる物品やサービスの提供に関する取引条件の確定のために約款を作成するということがよく行われています。このような約款の有効性については裁判でも多く争われていますが、多くの事例では、約款が無効と判断されています。これは取引にあたり約款が示されず、また、示されていてもこれを読んで理解することが事実上不可能なためです。 御質問の例でも約款を理由として顧客に要求をするのは、法的には難しい場合が多いでしょう。ただし新しい民法の規定では申込書等に約款を承諾する旨の記載がある場合には約款が有効となる旨定められています。返品というのは、法的に評価すれば、「売買契約を合意解約して目的物と代価を相互に返還する」ことを意味します。つまり返品というのは、お互いが合意して成り立つもので、販売者側でも、購入者側でも、その一方的な意思により返品を要求することはできません。権利として要求できるのは売買の目的物に瑕疵があった場合や、履行が遅延した場合のみです。 そのため売り渡したプリペイドカードがそれ自体が偽造品であったという場合でなければ、民法上、返品に応じる義務はありません。つまり御質問の例では、約款を引き合いに出すまでもなく、もともと返品は拒否できるという結論になります。

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