雇用・採用とAI (27)

川内 康雄

United States v. Meta Platforms Inc.

United States v. Meta Platforms Inc. 判例の要点 本件は22 Civ. 5187で、和解文書はMetaが責任を認めず、責任の認定を構成しないと明記している。DOJは2023年1月9日の発表で、和解が2022年6月27日に裁判所へ入力され、定期的な遵守確認の期間が2026年6月27日までであると説明した。2022年6月21日の提出・発表と入力日を区別する。 事実関係: 本件は、Meta Platforms社(旧Facebook社)が運営するソーシャルメディアプラットフォーム上の住宅広告配信システムにおいて、機械学習アルゴリズムを用いた広告ターゲティング機能が、結果的に人種、宗教、国籍等の保護属性に基づく差別を生じさせたとして、米国司法省が公正住宅法(Fair Housing Act)違反を理由に提起した訴訟である。特に問題となったのは、「Lookalike Audience」と呼ばれる類似オーディエンス機能で、既存の顧客データに基づいて類似する特性を持つユーザーを特定し、広告を配信する仕組みであった。 中心的争点: – AIアルゴリズムによる広告配信が、意図的でなくとも結果的に保護属性に基づく差別を生じさせる場合の法的責任 – 機械学習システムの「ブラックボックス」的性質と差別的影響の立証 – プラットフォーム事業者のアルゴリズム設計・運用における注意義務の範囲 – 技術的中立性の主張と差別的結果責任の関係 原告の主張: 米国司法省は、Metaの広告配信システムが、表面上は中立的な基準を用いながらも、実質的に人種、宗教、家族構成等の保護属性と強い相関を持つプロキシ変数を利用することで、特定の集団を住宅広告から排除していたと主張。これは公正住宅法第804条(c)に違反する差別的広告慣行であり、たとえアルゴリズムによる自動化された処理であっても、その設計・運用者であるMetaは法的責任を負うべきであると論じた。 被告の主張: Metaは、同社のシステムは技術的に中立であり、広告主の選択に基づいて動作するものであって、プラットフォーム自体が差別的意図を持つものではないと主張。また、2019年以降「Special Ad Audiences」という新システムを導入し、住宅・雇用・信用に関する広告では年齢、性別、郵便番号等のターゲティングを制限する措置を既に講じていたことを強調した。 AI/技術要素: 問題となった「Lookalike Audience」機能は、広告主が提供する「ソースオーディエンス」(既存顧客リスト等)のデータパターンを機械学習により分析し、Facebook/Instagram上の他のユーザーから類似する特徴を持つユーザーを特定する仕組み。このアルゴリズムは、直接的に人種等の保護属性を使用しないものの、居住地域、興味関心、行動パターン等の組み合わせが実質的にこれらの属性のプロキシとして機能し、結果的に特定の人種・民族グループを広告配信から除外する効果を生じさせていた。 重要な手続き上の決定: – 2019年3月:全米公正住宅同盟等の市民団体による関連訴訟の和解を受け、Metaが「Special Ad Audiences」システムを導入 – 2022年1月:司法省がMetaに対する調査を正式に開始 – 2022年6月21日:訴訟提起と同時に和解合意が発表される異例の展開 – 2022年12月:第三者コンプライアンス監視人の任命…

Continue reading...
川内 康雄

Louis et al. v. SafeRent Solutions, LLC et al.

Louis et al. v. SafeRent Solutions, LLC et al. Case Metadata Basic Information Case Name: Louis et al. v. SafeRent Solutions, LLC et al., No. 1:22-cv-10800 (D. Mass. 2022) Court: United States District Court for the District of Massachusetts Filing Date: May 25, 2022 Judgment Date: Settlement reached…

Continue reading...
川内 康雄

Equal Employment Opportunity Commission v. iTutorGroup, Inc., et al.

Equal Employment Opportunity Commission v. iTutorGroup, Inc., et al. 判例の要点 EEOCの主張では、応募ソフトウェアが女性は55歳以上、男性は60歳以上を自動排除するよう設定され、200人以上の適格な応募者が拒否された。36万5,000ドルは2023年の訴訟和解に基づく支払額であり、裁判所が個々の応募者への損害賠償額を本案判決で算定した額ではない。 事実関係: 本件は、オンライン英語教育サービスを提供するiTutorGroupが、2020年に講師採用システムにおいて年齢に基づく自動スクリーニング機能を実装し、女性応募者は55歳以上、男性応募者は60歳以上の場合に自動的に不採用とするプログラムを使用していたとされる事案である。同社は米国内で毎年数千人の講師を採用し、在宅またはリモート環境からオンライン授業を提供させていた。 この差別的なソフトウェアの存在は、ある応募者が生年月日以外は全く同一の内容で2通の応募書類を提出したことにより発覚した。実際の生年月日を記載した応募は拒否されたが、より若い生年月日を記載した応募では面接の機会を得ることができた。 中心的争点: – AIシステムによる年齢差別が雇用機会均等法(ADEA)違反に該当するか – プログラムによる自動的な年齢スクリーニングが意図的な差別(disparate treatment)として認定されるか – 男女で異なる年齢閾値を設定することの違法性 – 企業がAIシステムを使用した場合の差別責任の所在 原告の主張: EEOCは、iTutorGroupが採用ソフトウェアに年齢による自動拒否機能をプログラムし、200名以上の適格な応募者を年齢のみを理由に排除したと主張。これはADEAの明白な違反であり、技術による自動化であっても雇用主の責任は免れないとの立場を取った。 被告の主張: iTutorGroupは和解において全ての申し立てを否認し、違法行為を行っていないとの立場を維持。しかし、訴訟の長期化を避けるため和解に合意したものと推測される。 AI/技術要素: 本件で問題となったのは、応募者スクリーニングシステムに組み込まれた年齢フィルター機能である。このシステムは応募者の生年月日データを自動的に処理し、設定された年齢閾値(女性55歳、男性60歳)を超える応募者を機械的に除外していた。重要な点は、これが機械学習による偏見ではなく、人間が意図的にプログラムした差別的ルールであったことである。 重要な手続き上の決定: – 2022年5月5日:EEOCが連邦地方裁判所に訴訟を提起 – 2022年8月3日:修正訴状の提出 – 訴訟前の調停(conciliation)プロセスが不調に終わったため提訴に至る – 2023年8月9日:当事者間で和解合意に到達 – 2023年9月8日:裁判所により事件終結 証拠開示: 本件は和解により早期に解決されたため、本格的なディスカバリー手続きには至らなかった。しかし、EEOCの調査段階で、年齢による自動スクリーニングの存在を示す決定的な証拠(同一応募者による年齢を変えた複数応募の結果の相違)が確認されていた。 専門家証言: 和解により解決されたため、技術専門家による法廷での証言は行われなかった。…

Continue reading...
川内 康雄

Equal Rights Center v. Adams Investment Group, LLC

Equal Rights Center v. Adams Investment Group, LLC Case Metadata Basic Information Case Name: Equal Rights Center v. Adams Investment Group, LLC, et al., No. 1:22-cv-03423 (D.D.C. 2022) Court: United States District Court for the District of Columbia Filing Date: November 14, 2022 Judgment Date: December…

Continue reading...