企業の言論の自由・プライバシー:会社に人格権は認められるのか

会社には人格的利益にかかわる法的権利、たとえば言論の自由やプライバシーは認められているのでしょうか。

まず前提として、会社が商法等に規定された手続きに基づき設立されたものであれば、法人格、つまり法的権利や義務の主体となることができます。商法以外でも民法やその他の特別法など、自然人以外に法人格を付与する法律は多く存在しています。  もっとも自然人でいうところの人格的利益に関わる法的権利(人格権)については、各権利毎に会社が主体となれるものなのかが検討されています。まず言論の自由であれば、裁判例上、およそ会社であっても、自然人と異なることなく、これを享有することができるとされています。しかし企業が保有する秘密に関する権利については、これを「プライバシー」という概念ではなく、「営業秘密」という概念でとらえられています。不正競争防止法では明文で営業秘密という概念が用いられ、法律上の要件に該当すれば、権利の主張が可能です。もっとも自然人でいうところのプライバシー権で認められる範囲からは、比較的権利の範囲は狭いといえると思います。ただしこれらの権利があるといっても無制限に認められるものではなく、その他公益やその他人の権利との調整上制限を受けます。たとえば言論の自由も名誉毀損となるものは許されませんし、虚偽の事実の報告も、証券取引法や不正競争防止法で禁止されています。また営業秘密に該当する事項であっても、商法には利害関係人による開示請求権や、刑事事件における令状による捜査、押収の対象となります。

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です