メールアドレスの漏洩:メールアドレスの漏洩は損害賠償の対象か

当社は物販を行っている企業です。セールをメールで顧客に案内する際に、誤って複数の顧客のメールアドレスをTo欄に記載してしまい、顧客に他の顧客のメールアドレスがわかる状態で送信されてしまいました。怒った顧客から電話がかかってきて、「弁護士に相談して賠償を請求する」と言われました。当社として今回の事件は大変申し訳ないと思ってはおりますが、損害賠償を行ったりする必要性はあるのでしょうか。必要性があるとして、その金額はいくらぐらいになるのでしょうか。

このような事件が発生した場合、漏洩側の企業として被害に遭われた方にお詫びするのはもちろんですが、法的にはかならずしも賠償請求権が発生するわけではありません。 一般的に賠償請求を行うためには、何らかの実損が発生していたり、受忍限度を超える精神的苦痛が発生していることが必要です。 メールアドレスの漏洩であれば、漏洩したメールアドレスがスパム業者の手に渡って事実上使い物にならなくなり、メールアドレスの変更を余儀なくされたといった事態が想定されます。この場合には変更の為に必要となる実費を賠償するという形になります。もっとも法律上、裁判になった場合の立証責任は被害者側にありますので、「メールが使い物にならないこと」、「使い物にならなくなった原因がメールアドレスの漏洩に原因があること」を被害者側が立証して初めて賠償請求が認められることになります。 またメールアドレスは一般的にはセンシティブ性の無い情報ですので、メールアドレスの漏洩それ自体をもって慰謝料を請求するのは通常は困難でしょう。

メールアドレスだけでも氏名等と容易に照合できれば個人情報です。賠償の有無・額は、アドレスの性質、漏えいの態様、付随情報、本人への影響等によって判断され、単にメールが使えなくなった実費がないという理由だけで慰謝料が必ず否定されるわけではありません。また、賠償責任の判断と、個人情報保護法26条の委員会報告・本人通知の要否は別に確認します。