Thomson Reuters Enterprise Centre GmbH v. Ross Intelligence Inc.
Thomson Reuters Enterprise Centre GmbH v. Ross Intelligence Inc. 判例の要点 本件の主要なフェアユース判断は2025年2月11日の命令であり、裁判所は従前の判断を再検討して、Westlawのヘッドノートを利用した競合する法律検索システムについてフェアユースの抗弁を退けた。判決は生成AIの事件ではないことを明示しており、生成AIの全ての学習利用について一律に違法とした判断ではない。 事実関係: 本件は、法律調査AIスタートアップ企業であるRoss Intelligence社が、Thomson ReutersのWestlaw法律データベースから大量のコンテンツを無断で取得し、自社のAIシステムの訓練に使用したとされる著作権侵害訴訟である。Ross社は2015年に設立され、IBMのWatson技術を基盤として、弁護士向けの自然言語処理による法律調査ツールを開発していた。 2019年、Ross社は、Westlawデータベースへのアクセス権を持つ第三者(LegalEase Solutions社)と契約を締結し、同社を通じてWestlawのコンテンツを大規模に取得した。Thomson Reuters社の調査によると、Ross社は約25,000件の判例文書を含む大量のデータを組織的に収集し、これらのデータには、Thomson Reuters社が付加した独自の編集要素(ヘッドノート、要約、Key Numberシステムによる分類等)が含まれていた。 中心的争点: – AIシステムの訓練目的での著作権保護されたコンテンツの使用が、米国著作権法第107条のフェアユース(公正使用)の抗弁として認められるか – 大規模言語モデル(LLM)の訓練データとしての使用が「変容的使用」(transformative use)に該当するか – 商業的競合関係にある企業間でのデータ使用がフェアユース分析にどのような影響を与えるか – 利用規約違反を通じた不正アクセスが著作権侵害の判断に与える影響 原告の主張: Thomson Reuters社は、Ross社が組織的かつ意図的に著作権で保護された独自のコンテンツを盗用し、直接競合する製品の開発に使用したと主張。特に、単なる判例文そのものではなく、多大な投資と編集作業によって作成された付加価値情報(ヘッドノート、要約、分類体系等)が無断使用されたことを強調した。また、Ross社の行為により、Westlawの市場価値が損なわれ、ライセンス収入の機会が失われたと主張した。 被告の主張: Ross社は、AIモデルの訓練は研究目的の使用であり、フェアユースの範囲内であると主張。Google Books訴訟等の先例を引用し、機械学習のためのデータ使用は変容的であり、元の著作物とは異なる目的と性質を持つと論じた。また、AIシステムは元のコンテンツを複製するのではなく、パターンと関係性を学習するだけであり、市場への悪影響は限定的であると反論した。 AI/技術要素: Ross社のAIシステムは、自然言語処理技術を用いて弁護士の質問を理解し、関連する法的情報を提供する。システムの訓練には、大量の法律文書から言語パターン、法的概念の関係性、引用パターン等を学習させる必要があった。Ross社は、Westlawのデータを使用してモデルの精度を向上させ、特に判例間の関連性理解と法的推論能力を強化しようとしていた。 重要な手続き上の決定: – 2020年11月:Ross社が営業停止を発表(訴訟継続中) – 2021年3月:被告の却下申立てが棄却され、訴訟継続が決定 – 2023年6月:証拠開示手続きにおいて、Ross社の内部文書が開示され、組織的なデータ収集の詳細が明らかに…
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