生成AI学習と著作権 (66)

川内 康雄

Thomson Reuters Enterprise Centre GmbH v. Ross Intelligence Inc.

Thomson Reuters Enterprise Centre GmbH v. Ross Intelligence Inc. 判例の要点 本件の主要なフェアユース判断は2025年2月11日の命令であり、裁判所は従前の判断を再検討して、Westlawのヘッドノートを利用した競合する法律検索システムについてフェアユースの抗弁を退けた。判決は生成AIの事件ではないことを明示しており、生成AIの全ての学習利用について一律に違法とした判断ではない。 事実関係: 本件は、法律調査AIスタートアップ企業であるRoss Intelligence社が、Thomson ReutersのWestlaw法律データベースから大量のコンテンツを無断で取得し、自社のAIシステムの訓練に使用したとされる著作権侵害訴訟である。Ross社は2015年に設立され、IBMのWatson技術を基盤として、弁護士向けの自然言語処理による法律調査ツールを開発していた。 2019年、Ross社は、Westlawデータベースへのアクセス権を持つ第三者(LegalEase Solutions社)と契約を締結し、同社を通じてWestlawのコンテンツを大規模に取得した。Thomson Reuters社の調査によると、Ross社は約25,000件の判例文書を含む大量のデータを組織的に収集し、これらのデータには、Thomson Reuters社が付加した独自の編集要素(ヘッドノート、要約、Key Numberシステムによる分類等)が含まれていた。 中心的争点: – AIシステムの訓練目的での著作権保護されたコンテンツの使用が、米国著作権法第107条のフェアユース(公正使用)の抗弁として認められるか – 大規模言語モデル(LLM)の訓練データとしての使用が「変容的使用」(transformative use)に該当するか – 商業的競合関係にある企業間でのデータ使用がフェアユース分析にどのような影響を与えるか – 利用規約違反を通じた不正アクセスが著作権侵害の判断に与える影響 原告の主張: Thomson Reuters社は、Ross社が組織的かつ意図的に著作権で保護された独自のコンテンツを盗用し、直接競合する製品の開発に使用したと主張。特に、単なる判例文そのものではなく、多大な投資と編集作業によって作成された付加価値情報(ヘッドノート、要約、分類体系等)が無断使用されたことを強調した。また、Ross社の行為により、Westlawの市場価値が損なわれ、ライセンス収入の機会が失われたと主張した。 被告の主張: Ross社は、AIモデルの訓練は研究目的の使用であり、フェアユースの範囲内であると主張。Google Books訴訟等の先例を引用し、機械学習のためのデータ使用は変容的であり、元の著作物とは異なる目的と性質を持つと論じた。また、AIシステムは元のコンテンツを複製するのではなく、パターンと関係性を学習するだけであり、市場への悪影響は限定的であると反論した。 AI/技術要素: Ross社のAIシステムは、自然言語処理技術を用いて弁護士の質問を理解し、関連する法的情報を提供する。システムの訓練には、大量の法律文書から言語パターン、法的概念の関係性、引用パターン等を学習させる必要があった。Ross社は、Westlawのデータを使用してモデルの精度を向上させ、特に判例間の関連性理解と法的推論能力を強化しようとしていた。 重要な手続き上の決定: – 2020年11月:Ross社が営業停止を発表(訴訟継続中) – 2021年3月:被告の却下申立てが棄却され、訴訟継続が決定 – 2023年6月:証拠開示手続きにおいて、Ross社の内部文書が開示され、組織的なデータ収集の詳細が明らかに…

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川内 康雄

Bertuccelli v. Universal City Studios LLC

Bertuccelli v. Universal City Studios LLC Case Metadata Basic Information Case Name: Bertuccelli v. Universal City Studios LLC, et al., No. 2:19-cv-01304 (E.D. La.) Court: United States District Court for the Eastern District of Louisiana Filing Date: March 29, 2019 Judgment Date: June 2021 (Settlement reached)…

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川内 康雄

Williams-Sonoma, Inc. v. Amazon.com, Inc.

Williams-Sonoma, Inc. v. Amazon.com, Inc. Case Metadata Basic Information Case Name: Williams-Sonoma, Inc. v. Amazon.com, Inc., No. 3:18-cv-07548 (N.D. Cal. 2018) Court: United States District Court for the Northern District of California (San Francisco Division) Filing Date: December 14, 2018 Judgment Date: November 2, 2020 (Settlement and Dismissal)…

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川内 康雄

Waymo LLC v. Uber Technologies, Inc.

Waymo LLC v. Uber Technologies, Inc. Case Metadata Basic Information Case Name: Waymo LLC v. Uber Technologies, Inc., et al., No. 3:17-cv-00939 (N.D. Cal. 2017) Court: United States District Court for the Northern District of California, San Francisco Division Filing Date: February 23, 2017 Judgment Date:…

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川内 康雄

Bartz v. Anthropic PBC

判例の要点 2025年6月23日の命令は、LLMの学習利用、購入書籍を裁断してデジタル化する利用、海賊版を中央ライブラリーとして取得・保有する利用を区別した。学習利用についてフェアユースを認めた一方、海賊版の取得・保有まで一括して適法としたものではない。 背景と争点 (Background and Issues) 事実関係: 本件は、AI開発会社Anthropic PBC(Claudeチャットボットの開発者)が著作権で保護された書籍を無許可でAI言語モデルの訓練に使用したとして、複数の著作者らが提起した集団訴訟である。Anthropicは「世界中の全ての書籍」を「永続的に」保存する「中央図書館」の構築を目指し、約700万冊の著作権保護された書籍をLibGenやPiLiMiなどの海賊版サイトから無料でダウンロードし、同時に数百万冊の書籍を正規に購入してスキャン・デジタル化した後、紙の原本を廃棄した。 中心的争点: 主要な争点は以下の通りである: - AI言語モデルの訓練目的での著作権保護作品の使用がフェアユース(公正利用)に該当するか - 海賊版サイトからの書籍ダウンロードが著作権侵害に該当するか - 正規購入した書籍のデジタル化がフェアユースに該当するか - 著作者のライセンス市場への潜在的影響 原告の主張: 原告著作者らは、Anthropicが「何十万冊もの著作権保護書籍を盗用」して「数十億ドル規模の事業」を構築したと主張し、以下を求めた: - 著作権侵害に対する法定損害賠償(故意的侵害の場合、1作品あたり最大15万ドル) - 差止命令による侵害行為の停止 - 集団訴訟としての認定 被告の主張: Anthropicは以下の抗弁を展開した: - AI訓練におけるフェアユース抗弁(変容的使用) - 著作物の学習目的での使用は数世紀にわたり行われてきた合法的行為 - LLMの出力は原作品を置き換えるものではなく、新たな創作物である - 市場への害が証明されていない AI/技術要素: 本件で問題となったのは、Anthropicが開発したClaudeシリーズの大規模言語モデル(LLM)である。これらのモデルは人間の文体を模倣したテキスト生成が可能で、膨大な文章データで訓練される。Anthropicは訓練用に各作品を4つの主要な方法でコピーし、その総数は実用的に推定不可能なほど多数に及んだ。 手続きの経過 (Procedural History) 重要な手続き上の決定: - 2024年8月19日:原告3名による提訴…

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