機密保持契約:契約違反を理由に取引が潰れた場合損害賠償ができるか

当社は食品卸業を営んでいます。継続的な営業の結果、ある大口の客先との契約が取れそうになりました。この経緯を当社のある株主に報告したのですが、この株主が客先に連絡を取ってしまい、結果、客先が不審がって今回の契約が破談になりました。この株主とは機密保持契約を締結しているのですが、今回の損害の賠償の請求をすることができるのでしょうか。

損害賠償の請求をするにあたっては3つの問題を検討しなければいけません。まず機密保持契約を締結しているとのことですが、多くの機密保持契約は契約上機密となる範囲が限定されています。そのため契約を検討し、営業上の報告内容が機密保持義務の対象となっているかをまず調査しなければいけません。 次に今回契約を締結できなかった原因が、他の何らかの要因ではなく、まさにその株主が連絡を取ったことにあることが立証できることが必要です。訴訟上この点を立証するのは必ずしも容易ではありません。 最後にこの契約が取れなかった事による損害を立証できることが必要です。損害の内容はこの契約が取れていた場合の利益という事になりますが、将来のことであり、仮定的要素を含みますので、合理的な判断材料がそろわない限りは、立証したと見なされません。 このように御質問のようなケースでは訴えて賠償請求するのは不可能ではないが困難を伴うという結論になると思われます。

請求の根拠は契約上の債務不履行責任(民法415条)であり、通常損害と、特別事情を予見すべき場合の特別損害(416条)を区別します。交渉記録、成約見込みを示す資料、得られるはずだった売上から必要経費を控除した利益等を整理することが、因果関係と損害額の立証に役立ちます。