プライバシー・生体情報 (44)

川内 康雄

John et al v. Clearview AI, Inc.

John et al v. Clearview AI, Inc. 判例の要点 Clearviewの集約事件(1:21-cv-00135)では2025年3月20日に地裁が和解を承認したが、第7巡回区は2026年7月13日(25-1673)、全国クラスの独立した代表を欠く配分手続を理由に承認を取り消して差し戻した。過去の和解内容の紹介と、和解が確定して有効であるという記述を区別する必要がある。 事実関係: Clearview AI社は、2016年から2020年にかけて、Facebook、Instagram、Twitter、YouTube、Venmo等のソーシャルメディアプラットフォーム、ニュースサイト、その他の公開ウェブサイトから600億枚以上の顔画像を無断で収集(スクレイピング)した。同社は、これらの画像から顔認識データベースを構築し、法執行機関や民間企業に対して顔認識検索サービスとして販売していた。原告らは、自身の生体認証情報が同意なく収集・利用されたとして、2020年5月4日にニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所に集団訴訟を提起した。 中心的争点: – Clearview AI社による顔画像の大規模収集が、イリノイ州生体情報プライバシー法(BIPA)に違反するか – 公開されているウェブサイト上の画像から生体認証データを抽出することの適法性 – BIPAの域外適用の範囲と、イリノイ州外の原告への適用可能性 – 同意なき生体認証データの商業利用に対する救済措置の適切性 – 技術系スタートアップ企業の限定的な流動性を考慮した和解構造の妥当性 原告の主張: 原告らは、Clearview AI社がBIPAに違反して、書面による同意を得ることなく顔の生体認証識別子を収集、保存、使用したと主張。BIPAは違反1件あたり1,000ドルから5,000ドルの法定損害賠償を規定しており、600億枚の画像収集は天文学的な潜在的責任を生じさせると主張。また、プライバシー侵害、不当利得、過失等のコモンロー上の請求も追加した。 被告の主張: Clearview AI社は、公開されているウェブサイト上の画像の利用は合法的なウェブスクレイピングであり、第一修正によって保護される活動であると主張。また、同社のサービスは法執行機関による犯罪捜査を支援する公益的な目的を持つと強調。BIPAの域外適用については争い、イリノイ州外の原告には適用されないと主張した。 AI/技術要素: Clearview AIの顔認識システムは、深層学習アルゴリズムを使用して顔画像から独自の生体認証テンプレート(顔の幾何学的特徴を数値化したもの)を生成。これらのテンプレートは検索可能なデータベースに保存され、ユーザーが新しい顔画像をアップロードすると、システムは数秒以内にデータベース内の一致する個人を特定し、その個人が写っている公開画像へのリンクを提供する。 重要な手続き上の決定: – 2020年5月29日:ニューヨーク州南部地区連邦地裁のMcMahon判事が、David Mutnick氏の介入申立てを却下。「first-filed rule」の適用を否定し、既存原告が適切に代表していると判断 – 2021年1月8日:司法パネルが多管轄区訴訟(MDL)への統合を決定し、条件付移送命令を発出 – 2021年1月12日:11件の関連訴訟がイリノイ州北部地区連邦地裁に統合され、MDL No. 2967として審理開始 – 2024年6月:和解合意に到達…

Continue reading...
川内 康雄

In Re: Clearview AI, Inc., Consumer Privacy Litigation

In Re: Clearview AI, Inc., Consumer Privacy Litigation 判例の要点 Clearviewの集約事件(1:21-cv-00135)では2025年3月20日に地裁が和解を承認したが、第7巡回区は2026年7月13日(25-1673)、全国クラスの独立した代表を欠く配分手続を理由に承認を取り消して差し戻した。過去の和解内容の紹介と、和解が確定して有効であるという記述を区別する必要がある。 事実関係: Clearview AI社は、Facebook、Instagram、Twitter、YouTubeなどの公開ウェブサイトから数十億枚の写真を無断で収集(「スクレイピング」)し、独自のAIアルゴリズムを使用して顔の幾何学的特徴を分析し、「フェイスプリント」と呼ばれる生体認証データを作成しました。同社は、600億枚以上の顔画像を含むデータベースを構築し、法執行機関や民間企業にアクセス権を販売していました。この行為は、個人の明示的な同意なしに行われていました。 中心的争点: 本件の主要な争点は、Clearview AI社の行為がイリノイ州生体認証情報プライバシー法(BIPA)に違反するかどうかでした。具体的には、(1)書面による同意なしに生体認証識別子を収集したこと、(2)収集前に必要な通知を提供しなかったこと、(3)生体認証データの不適切な保管と使用、(4)公開されたデータ保持・破棄ポリシーの欠如が問題となりました。 原告の主張: 原告らは、Clearview AI社が彼らの顔画像と生体認証データを無断で収集・使用し、BIPAの要件を満たさなかったと主張しました。原告は、データの削除、今後の収集の禁止、および法定損害賠償を求めました。BIPAでは、故意または無謀な違反に対して一違反あたり5,000ドル、過失による違反に対して1,000ドルの法定損害賠償が規定されています。 被告の主張: Clearview AI社は、公開されているウェブサイトから入手可能な情報を使用することは合法的であり、同社のサービスは法執行機関の重要なツールであると主張しました。また、同社は財務的に限られた資源しか持たず、従来の現金による和解は不可能であると述べました。 AI/技術要素: Clearview AI社のシステムは、深層学習アルゴリズムを使用して顔の特徴点を分析し、個人を特定可能な生体認証テンプレートを作成します。このシステムは、法執行機関が容疑者や行方不明者を特定するために使用されていましたが、プライバシー侵害の懸念が広く指摘されていました。 重要な手続き上の決定: 2021年1月、11件の個別訴訟が広域係属訴訟(MDL)として統合されました。原告のMutnick氏は、データ削除を求める仮差止命令を申請しましたが、訴訟の進行中は判断が保留されました。2024年6月、当事者間で画期的な株式ベースの和解合意に達しました。 証拠開示: 訴訟過程で、Clearview AI社のデータ収集方法、アルゴリズムの詳細、顧客リストなどの重要な技術文書が開示されました。ただし、多くの技術的詳細は営業秘密として保護されました。 専門家証言: 顔認識技術と生体認証データのプライバシーに関する技術専門家が証言を提供しました。専門家は、Clearview AI社のシステムの精度、データ収集の規模、およびプライバシーへの影響について分析を行いました。 主要な判決内容: 2025年3月20日、Sharon Johnson Coleman判事は、22州とワシントンD.C.からの反対にもかかわらず、MDL和解を承認しました。裁判所は、和解が「公正、合理的、かつ適切」であると判断し、クラスメンバーに対してClearview AI社の23%の株式持分を付与することを承認しました。 勝敗の結果: 原告クラスは部分的な勝利を収めました。金銭的賠償は株式の形で提供され、Clearview AI社の民間部門への販売は永続的に制限されることになりました。ただし、連邦法執行機関への提供は継続が認められました。 命令された救済措置: – クラスメンバーへの23%株式持分の付与(5,175万ドル相当) –…

Continue reading...
川内 康雄

Broccolino v. Clearview AI, Inc.

Broccolino v. Clearview AI, Inc. 判例の要点 Clearviewの集約事件(1:21-cv-00135)では2025年3月20日に地裁が和解を承認したが、第7巡回区は2026年7月13日(25-1673)、全国クラスの独立した代表を欠く配分手続を理由に承認を取り消して差し戻した。過去の和解内容の紹介と、和解が確定して有効であるという記述を区別する必要がある。 事実関係: 本訴訟は、Clearview AI社が2016年から2020年にかけて、Facebook、Instagram、Twitter、LinkedIn等のソーシャルメディアプラットフォームから無断で数十億枚の顔写真をスクレイピング(自動収集)し、顔認識データベースを構築したことに端を発する。同社は収集した画像から顔の幾何学的特徴を抽出し、法執行機関や民間企業に対して個人識別サービスを提供していた。原告らは、自身の生体情報が同意なく収集・利用されたと主張し、2020年3月に集団訴訟を提起した。 中心的争点: – インターネット上で公開されている写真から生体情報を収集することが、イリノイ州生体情報プライバシー法(BIPA)に違反するか – ソーシャルメディアの利用規約違反による大規模データ収集が不法行為を構成するか – 顔認識技術による監視システムの構築が、プライバシー権の侵害にあたるか – 株式による和解が、現金支払いを原則とする集団訴訟において適切な救済となりうるか 原告の主張: 原告は、Clearview AI社が事前の書面による同意なく生体識別子を収集・保存・利用したことがBIPA違反にあたり、法定損害賠償(故意の違反の場合、違反1件あたり5,000ドル)を請求。また、同社の行為が大規模な監視インフラの構築につながり、憲法上のプライバシー権を侵害すると主張した。 被告の主張: 被告は、公開されている写真の利用は合衆国憲法修正第1条で保護される表現の自由の範囲内であり、BIPAの適用は違憲であると反論。また、顔認識技術は法執行機関による犯罪捜査や国家安全保障に不可欠なツールであり、公益に資すると主張した。 AI/技術要素: Clearview AIのシステムは、深層学習アルゴリズムを使用して顔画像から128次元の特徴ベクトルを生成し、これを「faceprint」として保存。検索時には、アップロードされた画像から同様の特徴ベクトルを生成し、データベース内の500億以上の画像と照合。99.6%の精度で個人を特定できるとされている。 重要な手続き上の決定: – 2021年8月:司法パネルが複数の訴訟をイリノイ州北部地区連邦地方裁判所に統合(MDL No. 2967) – 2022年5月:集団認証の申立てが承認され、全米規模のクラスが認定 – 2023年11月:和解協議開始の決定 – 2024年10月:予備的和解承認 証拠開示: 証拠開示手続きにおいて、Clearview AI社の内部文書から、同社が意図的にソーシャルメディアの利用規約を回避する技術を開発していたことが判明。また、顧客リストには2,200以上の法執行機関、企業、個人が含まれていることが明らかになった。 専門家証言: 原告側の技術専門家は、Clearview AIのデータ収集が技術的に「ウェブスクレイピング」の域を超えた組織的なデータ窃取にあたると証言。被告側専門家は、同技術が児童搾取事件の解決に貢献した事例を提示した。 主要な判決内容: 2025年3月20日、シャロン・ジョンソン・コールマン判事は、Clearview…

Continue reading...
川内 康雄

Vermont v. Clearview AI, Inc.

Vermont v. Clearview AI, Inc. Case Metadata Basic Information Case Name: State of Vermont v. Clearview AI, Inc., No. 226-3-20 Cncv (Vt. Super. Ct.) Court: Vermont Superior Court, Civil Division, Chittenden Unit Filing Date: March 10, 2020 Judgment / schedule described in original article: September 10,…

Continue reading...
川内 康雄

Burke v. Clearview AI, Inc.

Burke v. Clearview AI, Inc. 判例の要点 Clearviewの集約事件(1:21-cv-00135)では2025年3月20日に地裁が和解を承認したが、第7巡回区は2026年7月13日(25-1673)、全国クラスの独立した代表を欠く配分手続を理由に承認を取り消して差し戻した。過去の和解内容の紹介と、和解が確定して有効であるという記述を区別する必要がある。 事実関係: Clearview AI社は、Facebook、Twitter、Instagram等のソーシャルメディアプラットフォームから500億枚以上の顔写真を無断で収集し、顔認識データベースを構築した。同社は、このデータベースを法執行機関や民間企業に対して、個人を特定できるサービスとして提供していた。原告のDavid Burke氏を含むイリノイ州住民は、自身の生体情報が同意なく収集・使用されたとして、2020年1月に集団訴訟を提起した。 中心的争点: – イリノイ州生体情報プライバシー法(BIPA)違反の有無 – ソーシャルメディアから公開情報をスクレイピングすることの適法性 – 生体認証データの商業利用における同意要件 – 憲法上のプライバシー権侵害の成否 – 大規模監視技術に対する法的規制の適用範囲 原告の主張: 原告は、Clearview AI社が以下の違法行為を行ったと主張した: – BIPAに基づく書面による同意なしの生体情報収集 – 生体データの保持・削除ポリシーの不開示 – 第三者への生体情報の不正な販売・開示 – カリフォルニア州消費者プライバシー法違反 – コモンローにおけるプライバシー侵害 被告の主張: Clearview AI社は以下の抗弁を展開した: – 公開されているソーシャルメディア画像の使用は合法的 – 第一修正による表現の自由の保護 – 法執行目的での使用による公共の利益 –…

Continue reading...