プライバシー・生体情報 (44)

川内 康雄

Calderon v. Clearview AI, Inc.

Calderon v. Clearview AI, Inc. 判例の要点 Clearviewの集約事件(1:21-cv-00135)では2025年3月20日に地裁が和解を承認したが、第7巡回区は2026年7月13日(25-1673)、全国クラスの独立した代表を欠く配分手続を理由に承認を取り消して差し戻した。過去の和解内容の紹介と、和解が確定して有効であるという記述を区別する必要がある。 事実関係: 本件は、Clearview AI社が運営する顔認識技術サービスに関する集団訴訟である。同社は、Facebook、Instagram、Twitter、LinkedIn、YouTube等のソーシャルメディアプラットフォームから、ユーザーの同意なく600億枚以上の顔画像を収集(スクレイピング)し、独自の顔認識データベースを構築した。このデータベースは、法執行機関、民間企業、個人に対して、アップロードされた写真と照合して個人を特定するサービスとして提供されていた。 中心的争点: 1. 生体認証情報の無断収集・利用がイリノイ州生体情報プライバシー法(BIPA)に違反するか 2. インターネット上で公開されている画像の収集が合法的な「フェアユース」に該当するか 3. 顔認識技術の商業利用における同意要件の範囲 4. プライバシー侵害に対する適切な救済措置の形態 原告の主張: 原告らは、Clearview AIが数十億人の顔画像を無断で収集・分析・商業利用したことが、BIPAおよび各州のプライバシー法に違反すると主張した。特に、BIPAは生体認証情報の収集前に書面による同意を要求しており、違反1件につき1,000ドルから5,000ドルの法定損害賠償を定めている。原告側は、この大規模な違反行為により、理論上数兆ドルの損害賠償責任が生じると主張した。 被告の主張: Clearview AI側は、公開されているインターネット上の画像の収集は合法であり、憲法修正第1条で保護される表現の自由の範囲内であると反論した。また、同社のサービスは法執行機関による犯罪捜査や行方不明者の発見に貢献しており、公共の利益に資すると主張した。さらに、BIPAの域外適用や法定損害賠償の合憲性についても争った。 AI/技術要素: Clearview AIのシステムは、深層学習ニューラルネットワークを使用して顔の特徴を128次元のベクトルに変換し、データベース内の他の顔ベクトルと比較する。同社のアルゴリズムは、異なる角度、照明条件、経年変化があっても高い精度で個人を識別できると主張されていた。技術的には、顔の幾何学的特徴(目の間隔、鼻の形状、顎のライン等)を数値化し、独自の「顔指紋」を作成する仕組みである。 重要な手続き上の決定: 2021年5月、司法パネルが全米各地で提起された複数の訴訟を統合し、イリノイ州北部地区連邦地方裁判所でのMDL(多管轄地訴訟)として処理することを決定した。2022年3月、裁判所は集団訴訟の認証を認め、全米規模のクラスを承認した。2023年9月、当事者間で和解の基本合意に達し、2024年6月に最終承認を得た。 証拠開示: 証拠開示手続きにおいて、Clearview AIは自社のアルゴリズムの詳細、データ収集方法、顧客リスト、収益情報等の開示を求められた。同社は営業秘密を理由に一部の開示に抵抗したが、裁判所は保護命令の下での開示を命じた。特に注目されたのは、同社が2,200以上の法執行機関と600以上の民間企業にサービスを提供していたことが明らかになったことである。 専門家証言: 原告側の専門家は、Clearview AIのデータ収集が技術的にウェブサイトの利用規約に違反し、不正アクセスに該当する可能性があると証言した。一方、被告側の専門家は、顔認識技術の社会的有用性と、公開情報の利用における技術的必然性を強調した。プライバシー専門家は、生体認証データの不可逆性と長期的リスクについて証言した。 主要な判決内容: 2024年6月、連邦地方裁判所は当事者間の和解を承認した。この和解は、従来の金銭賠償ではなく、クラスメンバーに対してClearview AI社の23%の持分(評価額5,175万ドル)を付与するという画期的な内容となった。裁判所は、スタートアップ企業の財務状況を考慮し、この創造的な救済方法が実質的にクラスメンバーの利益に資すると判断した。 勝敗の結果: 実質的には原告側の勝利と評価できる。Clearview AIは違法性を認めていないものの、ビジネスモデルの大幅な制限を受け入れ、実質的な企業価値の一部を原告クラスに譲渡することになった。 命令された救済措置: 1. クラスメンバーへの23%持分付与(将来の企業価値上昇の恩恵を受ける権利)…

Continue reading...
川内 康雄

Hall v. Clearview AI, Inc. et al.

Hall v. Clearview AI, Inc. et al. 判例の要点 Clearviewの集約事件(1:21-cv-00135)では2025年3月20日に地裁が和解を承認したが、第7巡回区は2026年7月13日(25-1673)、全国クラスの独立した代表を欠く配分手続を理由に承認を取り消して差し戻した。過去の和解内容の紹介と、和解が確定して有効であるという記述を区別する必要がある。 事実関係: 本件は、顔認識技術企業Clearview AIが、インターネット上から無断で収集した数十億枚の写真を用いて大規模な顔認識データベースを構築し、法執行機関等に提供していたことに対する集団訴訟である。同社は、Facebook、Instagram、Twitter等のソーシャルメディアプラットフォームから写真を自動収集(スクレイピング)し、独自のアルゴリズムで顔の生体情報を抽出・分析していた。原告Hallは、イリノイ州居住者として、自身及び同様の立場にある全ての個人を代表して2020年2月に提訴した。 中心的争点: – インターネット上の公開写真から生体情報を無断収集する行為がイリノイ州生体情報プライバシー法(BIPA)に違反するか – 写真のスクレイピングと顔認識技術の商業利用が憲法修正第1条の表現の自由で保護されるか – 州外企業に対してイリノイ州法を適用することの妥当性 – BIPAの写真除外規定が顔認識技術にも適用されるか 原告の主張: – Clearview AIは事前の書面による同意なしに生体識別子を収集・保存・使用した – 必要な通知を提供せず、データ保持・破棄ポリシーを公表していない – 商業目的での生体データの不正利用により経済的利益を得た – 法定損害賠償として違反1件につき1,000ドル(過失)または5,000ドル(故意・無謀)を請求 被告の主張: – 顔認識技術は憲法修正第1条で保護される表現行為である – 公開されている写真の利用は合法的な情報収集活動 – BIPAの域外適用は休眠通商条項に違反する – 写真はBIPAの適用除外条項に該当する AI/技術要素: Clearview AIのシステムは、深層学習アルゴリズムを使用して顔の幾何学的特徴を数値化し、独自のベクトル表現に変換する。このプロセスでは、目の間隔、鼻の形状、顎のライン等の特徴点を測定し、個人を特定可能な「顔紋」を生成する。システムは100億枚以上の画像データベースと照合し、99%以上の精度で個人を特定できるとされている。 重要な手続き上の決定: – 2020年前半:被告による却下申立てが棄却され、イリノイ州連邦地裁が管轄権を維持…

Continue reading...
川内 康雄

Roberson v. Clearview AI Inc. / In re Clearview AI, Inc. Consumer Privacy Litigation

Roberson v. Clearview AI Inc. / In re Clearview AI, Inc. Consumer Privacy Litigation 判例の要点 Clearviewの集約事件(1:21-cv-00135)では2025年3月20日に地裁が和解を承認したが、第7巡回区は2026年7月13日(25-1673)、全国クラスの独立した代表を欠く配分手続を理由に承認を取り消して差し戻した。過去の和解内容の紹介と、和解が確定して有効であるという記述を区別する必要がある。 事実関係: 本訴訟は、2020年1月にニューヨーク・タイムズ紙が「The Secretive Company That Might End Privacy as We Know It」と題する調査報道を発表したことを契機に始まった。Clearview AI社は、Facebook、Instagram、Twitter、YouTubeなどのソーシャルメディアプラットフォームから30億枚以上(後に100億枚以上に拡大)の写真を無断で収集(スクレイピング)し、顔認識技術を用いて検索可能なデータベースを構築していたことが明らかになった。同社は、この技術を主に法執行機関に販売していたが、民間企業にも提供していたとされる。 2020年2月3日、バージニア州フェアファックス郡在住のShelby Zelonis Roberson氏が、バージニア州東部地区連邦地方裁判所に集団訴訟を提起した。その後、イリノイ州、カリフォルニア州、ニューヨーク州から同様の訴訟が相次いで提起され、2021年1月までに11件の集団訴訟が統合され、イリノイ州北部地区連邦地方裁判所で広域係属訴訟(MDL)として審理されることとなった。 中心的争点: 1. Clearview AIによる写真の無断収集が各州のプライバシー法、特にイリノイ州生体情報プライバシー法(BIPA)に違反するか 2. ウェブサイトの利用規約に違反するスクレイピング行為が不正アクセスに該当するか 3. 個人の顔画像を商業目的で無断使用することが肖像権侵害に当たるか 4. 収集された生体情報の保管・利用に関する同意の欠如が法的責任を生じさせるか 原告の主張: 原告側は、Clearview AIが以下の違法行為を行ったと主張した: – インターネット上の公開写真を本人の同意なく収集し、生体認証データベースを構築…

Continue reading...
川内 康雄

Mutnick v. Clearview AI, Inc.

Mutnick v. Clearview AI, Inc. 判例の要点 Clearviewの集約事件(1:21-cv-00135)では2025年3月20日に地裁が和解を承認したが、第7巡回区は2026年7月13日(25-1673)、全国クラスの独立した代表を欠く配分手続を理由に承認を取り消して差し戻した。過去の和解内容の紹介と、和解が確定して有効であるという記述を区別する必要がある。 背景と争点 (Background and Issues) 事実関係: 本件は、Clearview AI社が運営する顔認識技術サービスに関する集団訴訟である。同社は、Facebook、Instagram、Twitter、LinkedIn、Venmoなどのソーシャルメディアプラットフォーム、ニュースウェブサイト、その他公開されているオンラインソースから写真をスクレイピングすることにより、600億枚以上の顔画像のデータベースを構築した。このデータベースは、法執行機関やその他の顧客に対して、写真をアップロードすることで個人を特定できるサービスとして提供されていた。 2020年1月22日、イリノイ州在住のDavid Mutnick氏が、Clearview AI社およびその創業者らを相手取り、イリノイ州生体情報プライバシー法(BIPA)違反を理由に集団訴訟を提起した。原告は、同社が本人の同意なく生体識別情報を収集、保存、使用したと主張した。 中心的争点: – Clearview AIによる顔画像の無断収集がBIPA違反に該当するか – ウェブスクレイピングによる公開画像の収集が法的に許容されるか – 生体認証データの商業利用に関する同意要件 – 憲法上のプライバシー権の侵害の有無 – 適切な救済措置の形態と範囲 原告の主張: 原告は、Clearview AIが以下の行為によりBIPAに違反したと主張した: – 書面による同意なく生体識別情報を収集 – 生体情報の保存期間および破棄スケジュールを確立・公表していない – 収集した生体情報を第三者に無断で開示 – プライバシー権の重大な侵害 原告は、法定損害賠償、差止命令による救済、および弁護士費用の支払いを求めた。 被告の主張: 被告側は、公開されているウェブ上の画像の収集は合法的な活動であり、第一修正によって保護されていると主張。また、同社のサービスは法執行機関の正当な目的に資するものであり、公共の安全に貢献していると反論した。 AI/技術要素: Clearview…

Continue reading...
川内 康雄

Parsa et al v. Google LLC et al

Parsa et al v. Google LLC et al Case Metadata Basic Information Case Name: Cyrus A. Parsa et al v. Google LLC et al, Case No. 3:19-cv-02407-CAB-AHG Court: United States District Court for the Southern District of California (San Diego Division) Filing Date: December 16, 2019…

Continue reading...