技術的保護手段の回避 : DVDのリッピングは合法か
DVDをリッピングソフトを使用してコピーすることは違法ですか? 2012年の著作権法改正前は、アクセスコントロールの回避技術を自己使用するのみで、第三者に提供しない場合は規制範囲外でした。詳しくは後述の記事をご覧ください。しかし2012年の著作権法改正により、CSS等の技術的保護手段を回避して可能となった複製を、その事実を知りながら行うことは私的複製の例外から除かれるため、そのようなリッピングは著作権侵害となります。罰則は制定されていないものの、違法である以上は行うべきではありません。(以下の議論は2012年著作権法改正前のみ妥当するものです)【以下は2012年改正前の解説】 結論として当時の法令を前提としては直ちには違法とは言えないという結論になります。 著作権法は著作権者に複製権という権利を与えており(同法21条)、著作権者の許諾(同法63条)無しに著作物を複製すると著作権を侵害することになります。著作権を侵害すると、民事的には差止(同法112条)や損害賠償請求の対象となり(民法709条)、刑事的には罰則の対象となります(著作権法119条)。 もっとも著作物を個人的な用途に使用するためのみの目的で複製する場合には、私的複製として、著作権者の許諾を得る必要がありません(同法30条)。たとえばレンタルCDショップでCDを借りてきて、自分で聞くためにカセットテープにダビングしたり、ハードディスクにリッピングしても、著作権の侵害とはなりません。一方、他人に譲渡する目的でダビング、リッピングすることは、私的複製に該当しませんので、著作権侵害となります。 CDのコピーに際してはこのように単に私的複製の規定が適用されることにより適法という結論になります。一方、DVDのコピーは事情がもう少し複雑です。 DVDをリッピングしてコピーを作成するという作業は、分析すると、 1 DVDのコンテンツにかけられたCSS(Content Scrambling System)を解除する。2 ソフトによってはマクロビジョンも解除する。 3 CSSが解除されたコンテンツをハードディスクにコピーする。 4 ハードディスクにコピーされたコンテンツをDVD-R等に書き込む。 という行為に分けることができます。 CSSはコンテンツへのアクセスコントロール技術です。アクセスコントロール技術の回避は、不正競争防止法2条1項10号及び11号、同条5項により不正競争行為とされており、差止(同法3条)、損害賠償(同法4条)の対象とされています。もっとも正確には、対象となる行為は、アクセスコントロール技術の回避を可能とする装置又はプログラムの譲渡等のみです。アクセスコントロール技術の回避を可能とする装置またはプログラムの譲渡を受けることや、それらの使用は対象となっていません。そのため、CSSを解除するプログラムをダウンロードしたり、実際に使用してCSSを解除したとしても、不正競争行為にはなりません。一方、国内でCSSを解除するプログラムを譲渡、販売、公衆送信(ネット上でダウンロード可能な状態にすること)すれば、これらの行為が有償であるか無償であるかを問わず、不正競争行為となります。 次にマクロビジョンですが、これはコンテンツに対するコピーコントロール技術です。先の不正競争防止法の各条項はコピーコントロール技術の回避も対象としていますが、規制の内容は同じで、コピーコントロール技術の回避を可能とする装置の譲渡を受けたり、それらを使用することは不正競争行為にはなりません。 コピーコントロール技術は著作権法も保護の対象としています(同法30条1項2号)。もっとも規制の対象となっている行為は「コピーコントロール技術を回避することによって可能となる複製」です。そのためDVDをリッピングしたとしても、リッピング自体は、もともとマクロビジョンを解除しなくても可能な複製行為ですので、「コピーコントロール技術を回避することによって可能となる複製」には該当しません。ただ同条は、「その結果に障害が生じないようになった複製」も禁止しているため、マクロビジョンを解除して行う複製行為は私的複製にはならない事になります。なおマクロビジョンが解除されたコンテンツをコンポジット出力し、VHSのテープなどにダビングすることは、マクロビジョンを解除したことによって可能となる複製行為ですから規制の対象となります。 なおCSSやマクロビジョンの解除はDVDに収録されていたデータをビットデータとして改変していることになりますので、著作権法20条の同一性保持権を侵害しないかが問題にはなります。しかし同一性保持権の趣旨は著作者が創作したコンテンツの内容を保持することです。CSSやマクロビジョンを解除したとしても、対象となっている映像コンテンツに変更は加えられませんので、同一性保持権の侵害にはならないと考えられているようです。これはCDのデータをMP3に変換する際にも妥当します。 CSSないしはマクロビジョンが解除された後のハードディスクまたはDVD-R等へのコピーは私的複製となりますので、著作権者の複製権を侵害することにはなりません。 以上、リッピングツールをダウンロードし、マクロビジョンの解除を行わず、個人があくまでも私的な目的で使用してリッピングを行う限り、法律には違反しないということになります。 【現行法の整理】技術的保護手段がない映像を自分で私的に複製する場合まで、DVDであることだけを理由に違法になるわけではありません。保護手段を回避した私的複製の著作権侵害と、回避装置・プログラムの公衆への提供等に対する刑事規制は分けて考えます。前記の旧法解説にある不正競争防止法の条番号等は当時の記録です。現行の技術的制限手段の回避規制は不正競争防止法2条1項17号・18号等を確認してください。
Continue reading...