著作権Q&A (13)

川内 康雄

技術的保護手段の回避 : DVDのリッピングは合法か

DVDをリッピングソフトを使用してコピーすることは違法ですか? 2012年の著作権法改正前は、アクセスコントロールの回避技術を自己使用するのみで、第三者に提供しない場合は規制範囲外でした。詳しくは後述の記事をご覧ください。しかし2012年の著作権法改正により、CSS等の技術的保護手段を回避して可能となった複製を、その事実を知りながら行うことは私的複製の例外から除かれるため、そのようなリッピングは著作権侵害となります。罰則は制定されていないものの、違法である以上は行うべきではありません。(以下の議論は2012年著作権法改正前のみ妥当するものです)【以下は2012年改正前の解説】 結論として当時の法令を前提としては直ちには違法とは言えないという結論になります。 著作権法は著作権者に複製権という権利を与えており(同法21条)、著作権者の許諾(同法63条)無しに著作物を複製すると著作権を侵害することになります。著作権を侵害すると、民事的には差止(同法112条)や損害賠償請求の対象となり(民法709条)、刑事的には罰則の対象となります(著作権法119条)。 もっとも著作物を個人的な用途に使用するためのみの目的で複製する場合には、私的複製として、著作権者の許諾を得る必要がありません(同法30条)。たとえばレンタルCDショップでCDを借りてきて、自分で聞くためにカセットテープにダビングしたり、ハードディスクにリッピングしても、著作権の侵害とはなりません。一方、他人に譲渡する目的でダビング、リッピングすることは、私的複製に該当しませんので、著作権侵害となります。 CDのコピーに際してはこのように単に私的複製の規定が適用されることにより適法という結論になります。一方、DVDのコピーは事情がもう少し複雑です。 DVDをリッピングしてコピーを作成するという作業は、分析すると、 1 DVDのコンテンツにかけられたCSS(Content Scrambling System)を解除する。2 ソフトによってはマクロビジョンも解除する。 3 CSSが解除されたコンテンツをハードディスクにコピーする。 4 ハードディスクにコピーされたコンテンツをDVD-R等に書き込む。 という行為に分けることができます。 CSSはコンテンツへのアクセスコントロール技術です。アクセスコントロール技術の回避は、不正競争防止法2条1項10号及び11号、同条5項により不正競争行為とされており、差止(同法3条)、損害賠償(同法4条)の対象とされています。もっとも正確には、対象となる行為は、アクセスコントロール技術の回避を可能とする装置又はプログラムの譲渡等のみです。アクセスコントロール技術の回避を可能とする装置またはプログラムの譲渡を受けることや、それらの使用は対象となっていません。そのため、CSSを解除するプログラムをダウンロードしたり、実際に使用してCSSを解除したとしても、不正競争行為にはなりません。一方、国内でCSSを解除するプログラムを譲渡、販売、公衆送信(ネット上でダウンロード可能な状態にすること)すれば、これらの行為が有償であるか無償であるかを問わず、不正競争行為となります。 次にマクロビジョンですが、これはコンテンツに対するコピーコントロール技術です。先の不正競争防止法の各条項はコピーコントロール技術の回避も対象としていますが、規制の内容は同じで、コピーコントロール技術の回避を可能とする装置の譲渡を受けたり、それらを使用することは不正競争行為にはなりません。 コピーコントロール技術は著作権法も保護の対象としています(同法30条1項2号)。もっとも規制の対象となっている行為は「コピーコントロール技術を回避することによって可能となる複製」です。そのためDVDをリッピングしたとしても、リッピング自体は、もともとマクロビジョンを解除しなくても可能な複製行為ですので、「コピーコントロール技術を回避することによって可能となる複製」には該当しません。ただ同条は、「その結果に障害が生じないようになった複製」も禁止しているため、マクロビジョンを解除して行う複製行為は私的複製にはならない事になります。なおマクロビジョンが解除されたコンテンツをコンポジット出力し、VHSのテープなどにダビングすることは、マクロビジョンを解除したことによって可能となる複製行為ですから規制の対象となります。 なおCSSやマクロビジョンの解除はDVDに収録されていたデータをビットデータとして改変していることになりますので、著作権法20条の同一性保持権を侵害しないかが問題にはなります。しかし同一性保持権の趣旨は著作者が創作したコンテンツの内容を保持することです。CSSやマクロビジョンを解除したとしても、対象となっている映像コンテンツに変更は加えられませんので、同一性保持権の侵害にはならないと考えられているようです。これはCDのデータをMP3に変換する際にも妥当します。 CSSないしはマクロビジョンが解除された後のハードディスクまたはDVD-R等へのコピーは私的複製となりますので、著作権者の複製権を侵害することにはなりません。 以上、リッピングツールをダウンロードし、マクロビジョンの解除を行わず、個人があくまでも私的な目的で使用してリッピングを行う限り、法律には違反しないということになります。 【現行法の整理】技術的保護手段がない映像を自分で私的に複製する場合まで、DVDであることだけを理由に違法になるわけではありません。保護手段を回避した私的複製の著作権侵害と、回避装置・プログラムの公衆への提供等に対する刑事規制は分けて考えます。前記の旧法解説にある不正競争防止法の条番号等は当時の記録です。現行の技術的制限手段の回避規制は不正競争防止法2条1項17号・18号等を確認してください。

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川内 康雄

技術的保護手段の回避 : コピーガードの除去ソフトは違法か

ビデオのコピーガードやソフトのプロテクトを除去するのは違法ですか?crackやkeygenも違法ですか? この問題は著作権法と不正競争防止法の2つの法律にまたがる問題です。 コピーガードやいわゆるプロテクトはコピーコントロール技術と呼ばれています。法律上これらの技術は「技術的保護手段」(著作権法)、「技術的制限手段」(不正競争防止法)と呼ばれています。これらの法律上の正確な定義は若干難解ですが、いわゆるコピープロテクトの多くはこれらの定義に当てはまるものと言っていいでしょう。 不正競争防止法によりこれらの技術的保護手段・制限手段を回避するための装置、プログラムを譲渡、譲渡目的で製造、展示、輸出、輸入、公衆送信することは禁止されています。 また著作権法ではコピーコントロール技術を回避して複製を行うことは、私的複製の例外となり、著作権侵害となります。 いわゆる「プロテクト外し」が合法となる余地はかなり少ないでしょう。 技術的な仕組みにより「技術的保護手段」と「技術的利用制限手段」等の区別があり、単にcrackやkeygenと呼ばれていることだけで全て同じ扱いにはなりません。著作権法は一定の利用制限手段の回避行為も規制しており(113条7項)、私的使用や研究開発等の例外を含め具体的な条文を確認します。無断複製や回避プログラムの公衆提供が許されるという意味ではありません。

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川内 康雄

引用 :資料作成に際して論文を引用することは可能か

社員教育のための資料を作成する際に、ある高名な学者の論文の一部を転載したいと考えています。このような使用は著作権法に違反するのでしょうか? 著作物を転載する行為は「複製」に該当することになりますので、著作権者に無断で行えば、著作権を侵害したことになります。もっとも著作権法上の「引用」(32条)に該当する場合には、著作権を侵害したことになりません。 「引用」は、法律上は、「公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない」とされています。もっともこれでは基準が明確ではないため、裁判上は、①明瞭区別性があること、②主従関係があることが条件とされています。①明瞭区別性があるといえるためには、どの部分が引用部分であるかがわかるように、引用する側の著作物と、引用される側の著作物が明瞭に区別できる状態にあることが必要です。②主従関係があるといえるためには、引用する側の著作物が全体として主体性を保持し、引用される側の著作物が例証、参考資料等の付随的な性格を有していることが必要です。 さらに引用を行う際には出所を明示する必要があります(著作権法48条)。著作物の題号、著作者名、書物のページ数、掲載雑誌の名称、出版社名等を引用部分に付記して、出所を明らかにさせます。 以上、条件は若干複雑ですが、これらの条件を守って転載する限りにおいては、著作権者の同意を得なくても、転載が可能となります。 引用の対象は公表された著作物であることが必要です。出所さえ書けば転載が自由になるわけではなく、自分の説明・検討と引用部分との関係、分量、利用目的から正当な範囲かを判断します。また、一般企業の社員研修というだけで学校等の授業の例外(35条)が適用されるわけではありません。

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川内 康雄

音楽の公衆送信の手続きと著作権の有効期限:自演する楽曲をインターネットで公開することの可否

クラシックギターを練習中の者です。独学ですので練習の励みにするために、自分の演奏を録音して公開してみようと考えています。公開する曲は古い作曲家のものもあれば、最近のものもあるかと思います。気軽に聞いてもらいたいので、アクセスする人に料金を請求するつもりは毛頭ありませんが、アフィリエイト広告を貼り付けたりする可能性はあります。 御質問の件では、作曲家が作曲した楽譜を利用して演奏し、これを録音してインターネットサーバーに記録し、これを配信するという流れを取るかと思います。 作曲家が作曲した楽譜には著作権が認められています。そして著作権法上、著作権者には、公衆送信権・公衆送信可能化が認められています。これは著作物をインターネットなどで配信したり、配信が可能な状態にする権利です。 楽譜の著作権者以外がその楽譜なりこれを演奏したものの公衆送信を行うと、著作権を侵害することになってしまいます。そのため事前に著作権者から利用の許諾を得ることが必要です。 日本では多くの楽曲がJASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会)により集中的に管理されております。JASRACが管理している楽曲であれば、JASRACのホームページ(https://www.jasrac.or.jp/)からオンラインで利用許諾を得る手続きを行うことができます。JASRACが管理する楽曲であるか否かについても、JASRACのホームページで検索が可能です。 個人サイトの配信に必要な手続と使用料は、広告の有無、配信形式、曲数等により異なるため、JASRACのインターネット利用の最新案内で確認します。もっとも公開するプラットフォームによっては、このような手続きが不要となる場合があります。たとえばYoutubeはJASRACと包括契約を締結しています。この契約によりYouTube等の契約済みサービスで、契約対象の管理楽曲を自分の演奏で投稿する場合には、通常、投稿者による個別の利用許諾手続が不要となります。ただし編曲、外国作品の広告利用等、別の手続が必要な利用もあります。ユーザーの金銭負担も必要ありません。なおクラシック楽曲の場合は、既に著作権が消滅している場合が多く、その場合には著作権者又はその相続人からの許諾は不要です。著作権は原則としては著作者の死後70年(死亡した年の翌年から起算)で消滅します。たとえばギターの練習曲を多く残しているフェルナンド・ソルは1839年に没していますので、現在は既に著作権は消滅しています。なお注意すべきなのは、編曲者が別にいる場合には、編曲者にも著作権が発生していますので、編曲者の著作権が存在しているか否かも確認する必要があります。たとえば巨匠アンドレス・セゴビアがバッハのバイオリン曲であるシチリアーナをギター用に編曲した楽譜が存在しています。バッハは1750年に没していますので、シチリアーナをバッハの楽譜でバイオリンを使って演奏する分には著作権を考慮する必要はありません。しかしセゴビアの編曲による楽譜にはセゴビアの著作権が発生しており、そしてセゴビアが没したのは1987年ですので、セゴビアの相続人が有している著作権はまだ消滅していません。そのため、セゴビア編のシチリアーナを公衆送信するには、セゴビアの相続人から許諾を得る必要があります(実際にはシチリアーナはJASRACが管理しているようですので(作品コード 0S0-5441-8 SICILIANO)JASRACにおいて手続きを行うことになります)。 なおインターネットによる配信で公表するのではなく、ストリートでの演奏で練習成果を公表し、聴衆から対価を得ないのであれば、権利者から許諾を得る必要はありません。これは著作権法38条で非営利・無償・無報酬の場合には、著作物を公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができるとされているためです。逆に言えば、インターネットによる配信は公衆送信となり、この38条に公衆送信が含まれていないため、たとえ無償・非営利であっても、著作権者の許諾が必要ということになります。 保護期間の70年への延長は2018年12月30日施行です。それ以前に既に保護期間が満了していた著作権が原則として復活するものではありません。外国作品では戦時加算等も確認します。また市販CD等の音源を使う場合は、自演と異なり、レコード製作者等の著作隣接権の許諾も別途問題となります。

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川内 康雄

業務委託と著作権の帰属:契約書に取り決めが無い場合誰に帰属するのか

当社はシステム開発会社です。ある開発案件で、著作権に関する取り決めが全く書かれていない契約書を使用して契約を締結していました。このとき、著作権は、当社と委託者とどちらに帰属するのでしょうか。 契約書上での取り決めが欠落している場合には、法律と当事者間の合理的な意思を解釈することになります。 著作権については法律上、創作した者またはその使用者に帰属することとされています。そのため開発委託の場合には、原則として受託者に著作権が帰属することになります。これに対し、契約書外(口頭など)で著作権を委託者に移転させる旨合意していたり、継続的な取引において常に著作権を移転させていたという事情がある場合には、著作権が移転していると解釈する余地があります。 なお著作権が受託者側に帰属する場合には、開発委託をしたことから当事者の合理的な意思を解釈すると、著作権の移転を留保する以上は、委託者に開発成果物の使用を許諾するという意思があったということになります。そして成果物が委託者特有の業務を反映したものであったり、委託者の企業秘密を含むようなものの場合には、独占的な使用許諾、つまり他の第三者には使用許諾しないという意思の下に開発されたと解釈される可能性が高いでしょう。 使用者に著作権が帰属するのは、職務著作の要件を満たす場合です(15条)。代金を払っただけで委託者へ当然に移転する制度ではありません。譲渡を定める場合も、翻案権等(27条・28条)は譲渡契約に特掲しなければ譲渡人に留保されたものと推定されるため(61条2項)、利用範囲とともに明確にします。

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