企業法務 (22)

川内 康雄

賃貸人の地位の移転:賃貸物件が転売された後新オーナーから保証金を返してもらえるのか

賃貸オフィスに入居しているのですが、家主の経済的な状況が思わしくないようで、賃料の差押命令が来ました。今後もしかするとビルが転売されて家主が変わる可能性があると思っています。その際に保証金は新しい家主から返してもらえるのでしょうか。 賃貸物件が譲渡された場合には、賃貸人としての地位が移転し、保証金についても新しい家主に返還を請求することができます。 ただし物件の譲渡前に元の家主が破産や民事再生などの倒産手続きを行った場合には、保証金の返還請求権は一般破産債権となりますので、実際には返還を受けることが困難です。また賃借権が抵当権などの担保権に劣後する関係で、退去を強制されたくなければ保証金を入れ直せと要求されてしまう場合があります。 そのため家主がこれらの倒産手続きに入りそうかどうかは十分に注視しておくべきでしょう。 現在は民法605条の2に賃貸人の地位の移転と敷金返還債務等の承継が明文化されています。原則として賃借権に対抗力がある場合には賃貸人の地位が譲受人に移転します。譲渡前に旧賃貸人が破産したことだけで新賃貸人への敷金返還請求が常に否定されるわけではなく、賃貸人の地位が承継されたか、保証金の実質が敷金か、未払賃料への充当等を確認します。

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川内 康雄

民法改正:根保証の制度変更の内容は

改正民法で保証人の制度が改正されると聞きました。どのような内容でしょうか。 保証契約は原則として書面又は電磁的記録によらなければ効力を生じません(民法446条)。本稿の旧解説にある2005年施行改正に加え、2020年4月1日施行改正で個人保証の保護が拡充されています。 個人を保証人とする根保証契約では、貸金だけでなく、賃貸借等に基づく不特定債務の保証でも、極度額を定めなければ無効です(465条の2)。個人貸金等根保証では元本確定期日は契約日から5年以内で、定めがなければ原則3年です(465条の3)。この期間制限を全ての個人根保証に広げないよう注意します。 事業のための貸金等債務を個人が保証する場合には、原則として保証契約前1か月以内の公正証書による保証意思の確認が必要です(465条の6)。役員等の例外があります。また、主債務者から保証予定者への財産・収支等の情報提供や、債権者からの一定の情報提供の制度もあります。契約日と保証の類型を確認して適用を判断します。

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川内 康雄

合併:合併公告に掲載する貸借対照表の基準時

合併の際に公告が必要となる貸借対照表はいつの時点のものでしょうか。 公告が必要となるのは、公告の時点で存在している最終の貸借対照表、つまり定時株主総会の承認を受けた貸借対照表です。基本的には、公告を行う日が存する期の前期の貸借対照表ということになります。ただし公告を行う時点で、前期の定時株主総会がまだ開催されていない場合には、前期の最終の貸借対照表がまだ存在していません。そのため公告を行う対象となるのは、前々期の貸借対照表となります。 現行法上は「最終事業年度」(会社法2条24号)の計算書類が基準です。取締役会承認で足りる会社法439条適用会社等もあるため、必ず定時株主総会の承認が必要とは限りません。合併公告の記載は会社の種類や決算公告・有価証券報告書の状況に応じて異なります。

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川内 康雄

合併:合併時の貸借貸借表の公告の要否

合併の際には、貸借対照表の公告が必要と聞きましたが本当でしょうか。 株式会社の合併では、債権者保護手続の官報公告に、関係会社の計算書類に関する事項を記載します。吸収合併では会社法789条・799条、新設合併では810条等が根拠です。旧商法412条・商法施行規則の説明は、現行の会社法・会社計算規則に読み替える必要があります。 通常は最終事業年度の貸借対照表等の公告掲載先などを示すため、未公告なら事前にその対応を検討します。ただし、有価証券報告書提出会社、最終事業年度がない会社などでは記載内容が異なり、「過去の決算公告がないと、どの会社も合併できない」という一律の条件ではありません。 株式会社には合併の有無にかかわらず原則として決算公告義務があります(440条)。大会社では損益計算書も対象となり、有価証券報告書提出会社には同条4項の適用除外があります。債権者が異議を述べられる期間は1か月を下回れません。

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川内 康雄

小会社の監査役の権限拡張:業務監査や取締役会出席の可否

小会社の監査役について、その権限の範囲を拡張して、取締役の業務執行の監査権限や、取締役会への出席権を認めることは可能でしょうか? 現在の会社法では、監査役は原則として取締役の職務の執行を監査し(381条)、取締役会設置会社では原則として取締役会への出席義務があります(383条)。旧監査特例法の「小会社」を前提とした制度から変わっています。 非公開会社のうち監査役会設置会社・会計監査人設置会社を除く会社は、定款で監査範囲を会計に限定できます(389条)。現在の会社にこの限定があるなら、業務監査を法定の監査役の職務とするため、定款の限定を廃止する変更を検討します。社内規則や委任契約だけで会計限定という定款の定めを変更できるわけではありません。 監査範囲の限定を廃止すると任期満了となる制度もあるため(336条4項)、必要な定款変更、選任、登記等を併せて確認します。監査機能を実質的に充実させるという本稿の目的は、現行の機関設計に沿って実現する必要があります。

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